土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。
経歴:開業以来21年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら
土地の分筆費用は、境界確定測量が済んでいない土地と、
境界確定測量が済んでいる土地とで、
分筆費用に大きな違いがあることをご存知ですか?
なぜなら、境界確定測量が済んでいない土地では、
分筆登記費用だけでなく、境界確定測量の費用もかかるため、
土地の分筆費用が比較的高額になるからです。
そこでこの記事では、土地の分筆費用について、
境界確定測量が済んでいない土地と済んでいる土地に分けて、
土地の分筆登記申請業務を行っている土地家屋調査士がくわしく解説致します。
この記事を閲覧すると、分筆する土地の面積やケースごとに、
土地の分筆費用の相場がわかります。
【この記事の内容を動画で見る】
この記事と同じ内容を、【動画】でも観て頂けます。
記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。
境界確定測量が済んでいない土地の分筆費用
境界確定測量が済んでいない土地を分筆する場合、
法務局に分筆登記の申請をする前に、
土地の境界確定測量が必要になります。
境界確定測量というのは、隣地所有者全員と、
現地で境界の立会い確認を行い、各境界点などの測量をした後、
境界確認書 又は 隣接境界線証明書などに、
隣地所有者全員の署名・押印をいただく作業のことです。
これら境界確定測量の費用は、
分筆登記の前提として、
分筆登記の費用とは別にかかる費用です。
そのため、境界確定測量が済んでいない土地の分筆費用は、
かなり高額になるのが一般的です。
では、境界確定測量が済んでいない土地の分筆費用は、
一体いくらなのかですが、隣地に里道又は水路の有り無しで、
金額に大きな違いがあります。
そこで、隣地に里道又は水路がある場合と無い場合で、
それぞれの分筆費用の相場を見てみましょう。
隣地に里道又は水路がある場合
まず、隣地に里道又は水路がある土地の分筆費用についてです。
里道又は水路というのは、
下図1のような公図を取得するとわかりますが、
「道」又は「水」と記載された土地のことです。
たとえば、このような里道(道)や、水路(水)の土地が、
分筆する土地の隣地にあり、土地の面積が100坪の場合、
境界確定測量の費用として、約50万円~70万円位かかり、
分筆登記の費用として、約10万円~30万円位が目安になります。
つまり、面積が100坪の土地の分筆費用の合計としては、
約60万円~100万円位が相場ということです。
金額に幅があるのは、隣地所有者の人数や、生死の状況、
基準点や境界点の位置と数などが、現場ごとに異なり、
それらの内容が、金額に多少影響しますし、
依頼する土地家屋調査士によっても、ある程度費用に差が出るからです。
次に、分筆する土地の面積が、半分の50坪の場合、
分筆費用が半分になるかと言えば、単純にそうではありません。
なぜなら、面積が半分の場合、測量範囲は半分になりますが、
里道又は水路の境界確定書類の作成量や、
隣地所有者の人数なども、全て半分になるわけではないからです。
そのため、同じ条件で、土地の面積が50坪の場合には、
境界確定測量の費用として、約40万円~60万円位かかり、
分筆登記の費用として、約10万円~20万円位が目安になります。
つまり、面積が50坪の土地の分筆費用の合計としては、
約50万円~80万円位が相場ということです。
逆に、分筆する土地の面積が、100坪の倍の200坪の場合、
分筆費用が倍になるかと言えば、単純にそうではありません。
土地の面積が大きく影響するのは、あくまで、
測量範囲の問題だからです。
もちろん、測量する面積が広ければ広い程、
測量費用が徐々に高くなっていきますが、
その他の要因も、費用に影響するからです。
そのため、同じ条件で、土地の面積が200坪の場合には、
境界確定測量の費用として、約70万円~100万円位かかり、
分筆登記の費用として、約10万円~30万円位が目安になります。
つまり、面積が200坪の土地の分筆費用の合計としては、
約80万円~130万円位が、ざっくりですが、
一応の相場と考えられます。
ただ、土地家屋調査士が現地等を見てから費用を見積もる場合、
境界の復元点の有無や、基準点及び境界点の位置や数なども、
費用に影響するため、費用に多少の違いが出ることは、
ご理解いただければと思います。
なお、境界確定測量とは具体的に何かについては、
「確定測量とは?境界確定測量は必要?」や、
「境界確定とは?境界確定の費用はいくら位?」で、
くわしく解説しています。
また、分筆できない土地もあるため、事前に、
「分筆できない土地はどんな土地?3つの対処法」をご確認下さい。
隣地に里道又は水路が無い場合
ここからは、分筆したい土地の隣地に、
里道又は水路が無い土地の分筆費用についてです。
たとえば、面積が100坪の土地の場合には、
境界確定測量の費用として、約30万円~50万円位かかり、
分筆登記の費用として、約10万円~20万円位かかります。
つまり、面積が100坪の土地の分筆費用の合計としては、
約40万円~70万円位が相場になります。
次に、面積が50坪の土地の場合ですが、
やはり、面積が半分になるからと言って、
必ずしも、分筆費用も半分になるわけではありません。
なぜなら、面積が半分の場合、測量範囲は半分になりますが、
境界確認書や隣接境界線証明書などの作成量や、
隣地所有者の人数なども、全て半分になるわけではないからです。
そのため、同じ条件で、土地の面積が50坪の場合には、
境界確定測量の費用として、約20万円~30万円位かかり、
分筆登記の費用として、約10万円~20万円位が目安になります。
つまり、面積が50坪の土地の分筆費用の合計としては、
約30万円~50万円位が相場になります。
逆に、分筆する土地の面積が、100坪の倍の200坪の場合、
分筆費用が倍になるかと言えば、単純にそうではありません。
分筆費用は、土地の面積だけで決まるわけではないからです。
同じ条件で、土地の面積が200坪の場合には、
境界確定測量の費用として、約40万円~50万円位かかり、
分筆登記の費用として、約10万円~20万円位が目安になります。
つまり、面積が200坪の土地の分筆費用の合計としては、
約50万円~70万円位が相場になります。
なお、境界確定測量とは何をすることなのかについては、
「確定測量とは?境界確定測量は必要?」や、
「境界確定とは?境界確定の費用はいくら位?」を参照下さい。
また、分筆できない土地については、
「分筆できない土地はどんな土地?3つの対処法」で、
くわしく解説しています。
境界確定測量が済んでいる土地の分筆費用
境界確定測量が済んでいる土地というのは、
過去に、隣地所有者全員と境界立会いを行い、
座標による測量図面付き境界確認書又は隣接境界線証明書等に、
隣地所有者全員の署名・押印がされている状態の土地のことです。
境界確認書というのは、下図2のような書類のことで、
境界確定区間などを図示した測量図面を、
境界確認書に添付した書類になります。
境界確認書は、土地の所有者と隣地所有者が、
お互い署名・押印を行い、
添付測量図面と割印を押して完成となる書類です。
隣接境界線証明書というのは、下図3のような書類のことで、
隣地所有者のみが署名・押印をする形式の書類で、
添付測量図面と割印を押して完成となる書類です。
境界確定測量が済んでいる土地の分筆では、
境界確定測量の費用がかからないため、
純粋に、分筆登記の費用のみかかることになります。
たとえば、面積が100坪の土地の場合には、
分筆登記の費用として、約10万円~30万円位が相場になります。
もし、面積が半分の50坪の場合や、
倍の200坪の場合であっても、
通常、分筆登記の費用は、あまり変わらないでしょう。
なぜなら、法務局への分筆登記だけ行う場合は、
境界確定測量の作業は、済んでいることが前提なので、
登記申請書や添付書類の作成のみが、主な作業になるからです。
なお、ここまで、境界確定測量が済んでいる土地の場合で、
分筆登記の費用の相場をお伝えしましたが、
注意すべきことが、1点あります。
それは、ここまでお伝えした分筆費用については、
境界確定測量を行った土地家屋調査士が、
その土地の分筆登記を行う場合の費用の相場ということです。
もし、境界確定測量を行った土地家屋調査士ではなく、
別の土地家屋調査士が分筆登記を行う場合には、
資料調査や境界確認等の作業が、再度必要になってしまうため、
通常、費用が割高になってしまうことに注意が必要なのです。
そのため、境界確定測量を行った土地家屋調査士に、
分筆登記も依頼することをお勧めします。
また、分筆費用については、一応の目安や相場はありますが、
極端に言えば、土地家屋調査士が自由に設定できるため、
費用に多少の違いが発生することは、ご理解いただければと思います。
ちなみに、境界確認書とはどんな書類なのかについては、
「境界確認書とは?土地境界確認書に署名すべき?」で、
くわしく解説しています。
土地の分筆登記の登録免許税や実費
土地の分筆を行う場合、土地家屋調査士の報酬だけでなく、
通常、法務局に納める登録免許税や、土地の登記情報や公図、
地積測量図などを、法務局で取得する実費が発生します。
そこで、分筆登記の登録免許税や実費は、
それぞれいくら位なのかを、簡単に解説いたします。
法務局に納める登録免許税
土地の分筆登記を行う場合、下図4の登記記録のように、
所有権の登記があれば、
分筆後の土地一筆につき、千円の登録免許税がかかります。
たとえば、分筆後の土地が二筆の場合、
二筆×1000円で、登録免許税は2千円になります。
もし、分筆後の土地が三筆の場合、
三筆×1000円で、登録免許税は3千円になります。
なお、登録免許税は、分筆登記の申請書類を法務局に提出する際に、
登録免許税額分の収入印紙を台紙に貼り付けて、
法務局に納めるのが一般的です。
ただ、下図5の登記記録のように、
土地に所有権の登記が無ければ、登録免許税は不要です。
土地の分筆にかかる実費は?
土地家屋調査士が分筆登記を行う場合、通常、
分筆する土地 、及びその周囲全ての土地の登記情報や公図、
地積測量図などを取得して、内容を確認します。
これら資料の取得の際に、法務局などに支払う手数料は、
立替金となりますので、分筆登記完了後に、
土地家屋調査士から実費として、通常、支払いをお願いされます。
これらの資料の実費は、隣地の数が数筆であれば、
通常、数千円程度ですが、隣地の数が数十筆と多い場合、
数万円になることもあるのです。
また、隣地所有者が亡くなっている場合には、
亡くなった人と、その相続人の戸籍謄本類の取得が必要となり、
戸籍謄本類の取得のために、役所に支払う手数料や、
郵送代なども、実費として発生します。
亡くなっている隣地所有者が1人の場合は、
通常、数千円から1万円前後の実費ですが、
亡くなっている隣地所有者が、数人いる場合は、
数万円の実費になることもあるのです。
土地の面積による分筆費用の相場一覧
土地の面積 | 境界確定が済んでいない土地 | 境界確定が済んでいる土地 |
約50坪 (165㎡) の場合 | 隣地に里道又は水路ありの場合 ・境界確定に約40万~60万円位 ・分筆登記に約10万~20万円位 分筆費用合計約50万~80万円位 隣地に里道又は水路なしの場合 ・境界確定に約20万~30万円位 ・分筆登記に約10万~20万円位 分筆費用合計約30万~50万円位 | 隣地に里道又は水路ありの場合 ・分筆登記に約10万~20万円位 隣地に里道又は水路なしの場合 ・分筆登記に約10万~20万円位 |
約100坪 (330㎡) の場合 | 隣地に里道又は水路ありの場合 ・境界確定に約50万~70万円位 ・分筆登記に約10万~30万円位 分筆費用合計約60万~100万円位 隣地に里道又は水路なしの場合 ・境界確定に約30万~50万円位 ・分筆登記に10万円~20万円位 分筆費用合計約40万~70万円位 | 隣地に里道又は水路ありの場合 ・分筆登記に約10万~30万円位 隣地に里道又は水路なしの場合 ・分筆登記に約10万~20万円位 |
約200坪 (660㎡) の場合 | 隣地に里道又は水路ありの場合 ・境界確定に約70万~100万円位 ・分筆登記に約10万~30万円位 分筆費用合計約80万~130万円位 隣地に里道又は水路なしの場合 ・境界確定に約40万~50万円位 ・分筆登記に約10万~20万円位 分筆費用合計約50万~70万円位 | 隣地に里道又は水路ありの場合 ・分筆登記に約10万~30万円位 隣地に里道又は水路なしの場合 ・分筆登記に約10万~30万円位 |
分筆費用の全国平均報酬額
日本土地家屋調査士連合会が実施した分筆費用の実態調査では、
隣地に里道又は水路が無く、土地の面積が約80坪の場合で、
土地家屋調査士の全国平均報酬額は、税抜42万2,909円でした。
この金額は令和4年度の調査によるもので、
日本土地家屋調査士会連合会のホームページで、
土地家屋調査士報酬ガイドの8~9ページに公開されています。
土地の面積や隣地の条件などが異なった場合には、
土地家屋調査士の報酬額も異なってきますが、
土地の分筆費用の相場として、
合わせて参考にしていただければと思います。
なお、土地の分筆とは何か、分筆登記とは何かについては、
「土地の分筆とは?分筆登記とは?分筆費用はいくら?」で、
くわしく解説しています。
分筆できない土地については、
「分筆できない土地はどんな土地?3つの対処法」
をご確認下さい。
このページを読んだ人は、次の関連性の高いページも読んでいます。