土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。
経歴:開業以来21年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
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土地の分筆登記の流れは、境界確定測量が済んでいない土地と、
境界確定測量が済んでいる土地とでは、
分筆登記の流れと期間に大きな違いがあることをご存知ですか?
なぜなら、境界確定測量が済んでいない土地では、
法務局への分筆登記の申請前に、境界確定測量が必要なため、
境界確定測量が済んでいる土地に比べて、作業過程が多くなり、
分筆登記にかかる期間もかなり長くなるのが一般的だからです。
そこでこの記事では、分筆登記はどんな流れで行われて、
どれ位の期間がかかるのか、分筆登記の流れと期間について、
土地の分筆登記申請業務を行っている土地家屋調査士が、
くわしく解説致します
この記事をすべて閲覧することで、分筆登記の具体的な流れと、
土地の分筆にかかる期間がわかります。
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土地の分筆登記の流れ
土地の分筆登記は、通常、次の1~8の流れで行われます。
- 境界に関する資料を収集して内容を調査する。
- 隣地所有者全員に境界立会いのお願いをする。
- 隣地所有者と現地で立会い、境界を確認する。
- 基準点や各境界点を測量する。
- 境界確定書類を作成し、関係者が署名押印する。
- 分筆登記の申請書類を作成する。
- 法務局に分筆登記の申請書類を提出する。
- 法務局で分筆の登記完了証などを受領する。
もし、境界確定測量が済んでいない土地の場合、
上記1~8の流れで、土地の分筆登記を進めることになります。
逆に、境界確定測量が済んでいる土地の場合は、
上記1~5の作業は済んでいることになるため、
上記6~8の作業のみ行うことになるのです。
それでは、それぞれ具体的にどんな作業なのかを、
順番に解説いたします。
1.境界に関する資料を収集して内容を調査する。
分筆登記では、一番最初に、次の3つの資料を収集して、
内容を調査する必要があります。
- 土地の所有者が保管している境界に関する資料
- 法務局が管理している公図、登記情報、地積測量図
- 市区町村役所が管理している境界に関する資料
まず、土地の所有者が保管している境界に関する資料とは、
具体的には、下図1のような測量図面付きの境界確認書や、
隣接境界線証明書、境界確定測量図などのことです。
なぜ、これらの資料の収集と、内容調査が必要なのかと言えば、
境界点や境界線の根拠になる資料だからです。
特に、隣地所有者の署名・押印がされた境界確認書や、
隣接境界線証明書は、分筆登記の申請をする際に、
登記申請書の添付書類として、法務局に提出する書類となります。
ただ、過去に、土地の境界確定測量を全く行っていない場合は、
境界確認書や、隣接境界線証明書、境界確定測量図は、
いずれも存在しないことに注意が必要です。
次に、分筆する土地及びその周囲の土地の公図と、登記情報、
もしあれば地積測量図を、法務局ですべて取得します。
なぜ必要かと言えば、下図2のような公図を確認することで、
分筆する土地 および その周囲の各土地の地番や、
その位置と形状などがわかるからです。
下図3のような土地の登記情報を確認することで、
土地の地番や、地目、面積、
所有者の住所・氏名などがわかります。
そして、下図4のような土地の地積測量図を確認することで、
各土地の境界点や境界標の種類などがわかるからです。
特に、土地の公図や登記情報に関しては、
過去のものだと、内容が変わっていることがあるため、
最新の内容を確認する必要があります。
そのため、土地の所有者が保管したものがあったとしても、
最新の内容のものを、法務局で取得した方が良いです。
次に、市区町村役所が管理している境界に関する資料の収集です。
もし、分筆する土地の隣地に、
市区町村など役所が管理する里道又は水路がある場合、
境界確定書類の有り無しを、役所で確認して、
境界確定書類があれば、その資料を取得して内容を確認します。
また、分筆する土地が、過去に地籍調査事業を行っていたり、
土地区画整理事業を行っている場合には、
市区町村役所の担当課で、それらの事業の測量図面などを取得します。
なぜ必要かと言えば、事業の際の測量図面を入手することで、
その当時の基準点の位置や座標値、
周囲の土地との境界点の位置や座標値などがわかるからです。
2.隣地所有者全員に境界立会いのお願いをする。
土地の分筆登記を行う場合、通常、
その土地に隣接する全ての土地の所有者と、
現地で立会い、境界の確認を行う必要があります。
もし、隣地所有者が、市区町村や県などの官地であれば、
その役所の境界確認の担当者と現地で立会い、
境界の確認を行う必要があるのです。
そのため、隣地所有者が個人の場合には、直接会いに行き、
下図5のような文書で、境界立会いのお願いをするか、
郵送などの方法で、境界立会いのお願いをします。
もし、隣地所有者で亡くなっている人がいれば、
その相続人の住所や氏名を戸籍などで調べて、
相続人に、境界の立会いのお願いをすることになるのです。
また、隣地所有者が市区町村や県、国などの官地の場合は、
その土地を管理している担当部署に、下図6のような、
境界立会申請書といった書類を提出するのが一般的です。
ただ、役所に提出する土地境界立会申請書は、
役所ごとに様式が違うため、決められた様式を入手し、
添付書類などと一緒に役所に提出しなければなりません。
そして、土地境界立会申請書類を役所に提出後に、
役所の担当者から、境界立会いの日時のお知らせがあり、
通常、その指定日時に境界の立会いを行うことになります。
なお、役所の担当者との境界立会い日時は、
役所側の混雑具合などによって、
申請書類を提出してから、約1週間後の場合もあれば、
約1ヶ月先や、1ヶ月半くらい先になることもあります。
そのため、役所の担当者との立会い日時が、
後程ご説明致します分筆にかかる期間に、
大きく影響してくるわけです。
なお、境界立会いとは具体的に何をすることなのかや、
境界立会いの流れについては、
「境界立会とは?土地の境界立会には行くべき?」で、
くわしく解説しています
3.隣地所有者と現地で立会い、境界を確認する。
立会い日時に、隣地所有者と現地で立会い、
各境界点および境界線の確認を行います。
もし、現地に境界標があれば、
境界標の示す位置が、境界点で良いかどうかと、
境界標と境界標を結ぶ線が、境界線で良いかどうかなどを、
土地の所有者と隣地所有者が、互いに確認します。
逆に、現地に境界標が無ければ、
ブロック塀やコンクリート構造物の占有状況、
公図や地積測量図などの資料、各土地所有者の証言によって、
土地の境界点や境界線を確認することになるのです。
もし、境界点と境界線について合意できた場合、
境界標がなければ、何らかの境界標を設置するか、
確認した境界点にマーキングなどの印を付けて、
後で測量ができるようにしておきます。
なお、境界標としては、金属鋲、金属標、コンクリート杭、
プラスチック杭、石杭の、いずれかを設置するのが一般的です。
なお、境界標とは何かについては、
「境界標とは?土地家屋調査士が解説!」で、
くわしく解説しています。
境界標の種類については、
「境界標の種類を解説!5種類の境界標と実例」を参照下さい。
4.基準点や各境界点を測量する。
分筆する土地の各境界点を測量するため、
下図7のような基準点を設置してから、基準点測量を行い、
それと同時並行で、各境界点の測量も行います。
なお、分筆する土地の近くに、下図8のような街区基準点など、
公共の基準点がある場合、分筆登記に必要な地積測量図は、
原則、世界測地系の座標値で作成する必要があります。
その場合、測量機器にもよりますが、
近くの街区基準点から、分筆する土地の所まで、
基準点を引っ張ってくる作業が必要な場合もあるのです。
5.境界確定書類を作成し、関係者が署名押印する。
境界確定書類としては、隣接地が民地の場合、
下図9のような測量図面付きの境界確認書、
又は、隣接境界線証明書を作成します。
上図9のような測量図面付きの境界確認書の場合、
土地の所有者と隣地所有者が、お互い署名・押印を行います。
もし、測量図面付きの隣接境界線証明書の場合は、
隣地所有者のみが署名・押印を行うのです。
境界確認書の様式にするのか、
隣接境界線証明書の様式にするのかは、
個人間では、特に決まりはありませんので、
通常、土地家屋調査士が判断しています。
しかし、隣接地が官地の場合には、通常、
下図10のように、役所が用意している様式で、
境界確定書類を作成しなければなりません。
隣地が道路、里道又は水路で様式が異なりますし、
役所によっても様式が異なるため、
事前に境界確定書類の様式を入手しておく必要があります。
もし、隣地が市道などの道路の場合には、
測量図面付きの隣接境界線証明書を、
役所の道路管理課などに提出して、
役所の署名・押印をいただく流れになります。
もし、隣地が里道又は水路の場合には、
作成した境界確定書類に、土地の所有者が署名・押印した上で、
対面地を含む隣地所有者全員に署名・押印をいただきます。
その後で、境界確定書類を役所の担当課に提出して、
役所の署名・押印をいただく流れになるのです。
6.分筆登記の申請書類を作成する。
分筆登記の申請書類として、
少なくとも、次の5つの書類を作成します。
- 登記申請書
- 地積測量図
- 分筆所在図
- 境界確定に関する書類
- 案内図
これら5つの書類の他にも、
関係土地の所有者の内で、亡くなっている人がいた場合、
相続関係のわかる戸籍謄本等も必要です。
また、土地家屋調査士が代理人として申請する場合には、
不動産登記規則第93条の不動産調査報告書と、
申請人から土地家屋調査士への委任状の作成も必要になります。
なお、土地の分筆とは何か、分筆登記とは何かについては、
「土地の分筆とは?分筆登記とは?分筆費用はいくら?」で、
くわしく解説しています。
分筆登記申請書の記載例や書き方については、
「土地の分筆登記申請書の記載例と書き方」を参照下さい。
7.法務局に分筆登記の申請書類を提出する。
分筆登記の申請書類ができましたら、
分筆予定の土地の管轄法務局に、
分筆登記の申請書類一式を提出します。
提出については、法務局の窓口で提出する方法や、
オンライン申請により提出する方法などがあります。
8.法務局で分筆の登記完了証などを受領する。
無事に分筆登記が完了すれば、下図11のような、
登記完了証などの書類を、法務局から受け取ります。
なお、分筆登記の申請書類を法務局に提出したあと、
不足書類や補正などがなければ、通常、
約10日~2週間程度で、分筆登記が完了します。
しかし、不足書類があったり、補正作業が必要になった場合は、
法務局の担当者から、申請人又は代理人に電話連絡があり、
その内容に対処してから、分筆登記完了になることに注意が必要です。
以上が、土地の分筆登記の流れになります。
なお、分筆登記の費用と相場については、
「土地の分筆費用はいくら?分筆費用の相場」で、
くわしく解説しています。
分筆にかかる期間
分筆にかかる期間は、境界確定測量が済んでいない土地と、
境界確定測量が済んでいる土地で、大きな違いがあります。
そこで、ここからは、境界確定測量が済んでいない土地と、
境界確定測量が済んでいる土地に分けて、
それぞれ分筆にかかる期間を解説いたします。
境界確定測量が済んでいない土地
境界確定測量が済んでいない土地では、
法務局への分筆登記申請の前に、
境界確定測量を行う必要があります。
境界確定測量は、資料収集及びその内容調査作業から始まり、
境界の立会い、基準点や、境界点の測量、
境界確定書類の完成までの作業のことで、
通常、約2ヶ月~3ヶ月程度の期間がかかります。
ただ、境界確定測量が済んだ後で、
法務局へ分筆登記を申請する流れになることに注意が必要です。
法務局に分筆登記の申請書類を提出してからは、
不足書類や、補正作業などなければ、
通常、約10日~2週間程度で分筆登記が完了します。
そのため、境界確定測量が済んでいない土地では、
境界確定測量から分筆登記完了まで、通常、
約3ヶ月~4ヶ月程度の期間がかかると考えておいたほうが良いです。
境界確定測量では、隣地所有者の都合や、
境界立会いがスムーズに進むかどうか、
境界確認書等に隣地所有者の署名押印をいただけるかどうかで、
作業にかかる期間が、大きく左右されます。
もし、行方不明などで隣地所有者と接触できなかったり、
境界点について、隣地所有者と合意できなかったり、
境界確認書などに署名・押印をいただけなかったりすると、
そのままでは、分筆登記ができないこともあるのです。
なお、境界確定測量については、
「確定測量とは?境界確定測量は必要?」や、
「確定測量の流れと注意点」で、
くわしく解説しています。
隣地など土地の所有者の調べ方については、
「土地の所有者を調べる3つの方法」をご参照下さい。
境界確定測量が済んでいる土地
境界確定測量が済んでいる土地の場合、
境界確定資料を用意できれば、
分筆登記申請書類を作成して、
法務局に提出するのみという流れになります。
分筆登記の申請書類の作成には、
通常、1週間~2週間程度の期間がかかり、
法務局に申請書類を提出してから分筆登記完了までは、
通常、約10日~2週間程度かかります。
そのため、境界確定測量が済んでいる土地なら、
分筆登記の完了まで、
だいたい1ヶ月程度の期間がかかるということです。
ただし、不足書類があったり、補正作業があると、
不足書類や補正に対処してから、
登記完了となることに注意が必要です。
以上、「土地の分筆登記の流れと期間」について解説いたしました。
なお、土地の分筆費用や相場については、
「土地の分筆費用はいくら?分筆費用の相場」で、
くわしく解説しています。
そもそも土地の分筆とは何か、分筆登記とは何かについては、
「土地の分筆とは?分筆登記とは?分筆費用はいくら?」をご確認下さい。
また、どんな土地でも分筆できるわけではなく、
分筆できない土地もございます。
分筆できない土地はどんな土地なのかについては、
「分筆できない土地はどんな土地?3つの対処法」で、
くわしく解説しています。
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なお、分筆の登記など表示に関する登記については、
Q&Aで実務を解説している書籍も出版されていますので、
合わせてご確認いただければと思います。