境界標(きょうかいひょう)とは、
土地の境界点を現地で示す標識のことで、
境界点の目印になるものです。
具体的には、金属標(きんぞくひょう)、金属鋲、
プラスチック杭、コンクリート杭、石杭などが、
境界標として一般的に設置されます。
金属標 | 金属鋲 | プラスチック杭 | コンクリート杭 | 石杭 |
ただ、自分の土地の境界は大体わかるけど、
境界標というのは気にしたことが無いし、
よくわからないという人も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、境界標とはどういうものか、
境界標の種類や見方、境界標にはどんな効力があるのかなど、
土地の境界確定業務を行っている土地家屋調査士が、
境界標とは何かについてくわしく解説いたします。
土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。
経歴:開業以来21年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら
この記事をすべて閲覧することで、
境界標とはどういうものなのかが全てわかります。
境界標とはどういうもの?
境界標とは、下図1のように、
土地と土地との各境界点に、
境界を示すものとして現地に設置される標識(目印)のことです。
境界標は通常、境界の折れ点に設置されます。
そして、境界標と境界標を結んだ線が境界線となり、
土地の範囲が現地で明確になるのです。
ただ、境界標はすべての土地の各境界点に、
常に設置されているわけではありません。
下図2のように、全境界点に境界標が設置された土地もあれば、
一部の境界点にのみ境界標が設置されている土地もあり、
境界標が全く設置されていない土地もあるのです。
なぜ、境界標がある土地と無い土地があるのかと言えば、
境界標は、土地所有者と隣地所有者が境界を確認した上で、
お互い協力して設置できるものだからです。
境界標を設置する費用についても、
隣地所有者と折半して負担するのが原則です。
このことは界標設置権(かいひょうせっちけん)といい、
民法第223条で定められています。
ただし、測量にかかった費用については、
その土地の広さに応じて負担するものとされていますが、
実際には、境界確定を必要とする人が全ての費用を出すのが通例です。
つまり、片方の土地所有者の判断のみで、
勝手に境界標を設置できるものではないのです。
なお、現地に境界標がある場合でも、
必ずしも土地の境界点に正確に設置されているとは限りません。
なぜなら、境界標を設置したときには、
土地の境界点に正確に設置されていたとしても、
その後、何らかの理由で多少動いている可能性もあるからです。
そのため、現地に境界標があれば、
土地の境界点を示している重要な資料になりますが、
境界点を正確に示していない可能性もあることに注意が必要なのです。
境界標が正確に境界点を示しているかどうかの判断については、
地積測量図または境界確定図などで確かめることになります。
もし、地積測量図も境界確定図などの資料もない場合は、
隣接所有者と現地立会を行い、構造物の位置関係や、
関係者の証言などから総合的に判断することになります。
境界標の種類
土地の境界点に設置されている境界標は、
下図1のように、金属標、金属鋲、プラスチック杭、
コンクリート杭、石杭の5種類が一般的です。
金属標 | 金属鋲 | プラスチック杭 | コンクリート杭 | 石杭 |
上記5種類の境界標以外にも、地域によっては、
コンクリート面への刻印を境界標とすることもあります。
ただし、どんなものでも境界標にできるわけではありません。
なぜなら、不動産登記規則第77条第1項第9号により、
地積測量図に記載する境界標とは、
筆界点(境界点)にある永続性のある石杭又は金属標、
その他これに類する標識をいうと定められているからです。
つまり、境界標には永続性が必要とされるため、
材質が石やコンクリート、合成樹脂、金属など耐久性があり、
簡単には動かないように設置されているものでなければなりません。
そのため、木杭は一時的な仮杭として使うこともありますが、
永続性がないため、境界標としては不向きです。
なお、5種類の境界標については、
「境界標の種類を解説!5種類の境界標と実例」で、
1つ1つくわしく解説しています。
境界標の見方
境界標は、金属標、金属鋲、プラスチック杭、
コンクリート杭、石杭の5種類が一般的ですが、
それぞれの境界標の頭部には、
次のいずれかのマークがあります。
十字 | 矢印 | T字 | 一本線 |
境界標を見る際には、これらのマークを見ることで、
境界点がどこになるのかがわかるようになっています。
それぞれのマークが示す境界点は次のとおりです。
なお、境界標の見方については、
「境界標の見方を解説!境界標のどこが境界点?」で、
実例を交えながらくわしく解説しています。
境界標にはどんな効力がある?
もし、土地の各境界点に境界標が設置されていれば、
土地と土地との境界点や境界線がどこなのかが、
現地で一目でわかります。
そのため、隣地所有者との境界についての争いや、
越境問題などの予防にもつながります。
土地を売却する場合にも、
買主に対して土地の範囲を現地で明確に示すことができるので、
境界のことで売却後に問題にならない安全な取引が可能になるのです。
また、火事・津波等の災害で建物やブロック塀が無くなっても、
境界標を探せば、
自分の土地の範囲を確認できるようになります。
もしも境界標が無かったら・・・
もし、境界があいまいで現地に境界標も設置されていなければ、
隣地所有者との境界争いや、
越境問題の心配が常につきまといます。
たとえ「境界についてはお互い認識しているから」
と思っていても安心はできません。
なぜなら、境界標という現地で明確な証拠がなく、
地積測量図や境界確定図などの書類もない状態ですと、
時間が経つとお互いの言い分が違ってくることもあるからです。
さらに、その隣地所有者が生きている内はまだ良いですが、
亡くなってしまうと、その相続人との話し合いになってしまい、
親からはこう聞いていたと、
本来の境界から越境した境界線を主張されることもあります。
また、将来的に土地を売却したり、
隣地との境界付近で工事をするのも大変になります。
なぜなら、土地を売却する場合、
売り主は買い主に対して、
売却範囲を現地で示す義務があるからです。
隣地との境界付近で、敷地内の工事をしたい場合や、
ブロック塀の新設工事をしたい場合にも、
境界標がないと工事が難しくなります。
結局、現地に境界標が無ければ、境界標を復元するか、
または、隣地所有者と各境界点を確認して、
現地に境界標を設置してから売却や工事をすることになるのです。
そのため、土地の所有者は、
土地の全境界点に境界標が設置されているか確認し、
境界標がない境界点については、境界標の設置を検討しましょう。
境界標は誰のもの?管理は誰がする?
境界標は、その境界標を設置する際に、
費用を出した人のものです。
隣地所有者と共同出費で境界標を設置した場合は、
その隣地所有者との共有物になります。
ただし、土地を購入する際に、
すでに境界標が設置されていた場合は、
その土地を購入した人のものになります。
そして、境界標の管理については、
その土地の所有者が行うべきことです。
土地の所有者は、境界標を破損したり、
動かされたり、無くならないように注意する必要があるのです。
境界標が破損したり、動いたり、
無くなったりするのは、主に次のような原因があります。
- 道路工事やブロック塀の工事などで、境界標が動いたり無くなったりする。
- 自動車などに度々踏まれることで、境界標が破損したり動いたりする。
- 土砂などに埋もれて、境界標がどこにあるのかわからなくなる。
- 境界標の頭部にあるマークが経年劣化ではっきりしなくなる。
上記のことに注意しながら、境界標を適切に管理しましょう。
まとめ
- 境界標とは、現地で土地の各境界点を示す標識(目印)のこと。
- 境界標は、金属標(金属プレート)や金属鋲、プラスチック杭、コンクリート杭、石杭が一般的。
- 境界標は、隣地所有者と境界を確認の上、双方が協力して設置できるもの。
- 境界標があれば、隣地との境界争いや越境を予防できる。
- 境界標が無ければ、土地売却の際に、境界標を現地に設置する必要がある。
このページを読んだ人は、次の関連性の高いページも読んでいます。