土地の境界点に設置される一般的な境界標としては、
金属標(きんぞくひょう)・金属鋲(きんぞくびょう)・
プラスチック杭・コンクリート杭・石杭の5種類があります。

金属標の拡大写真金属鋲の拡大写真コンクリート杭の拡大写真石杭の拡大写真
金属標金属鋲プラスチック杭コンクリート杭石杭
(一般的な境界標の一覧)

なぜなら、不動産登記規則第77条1項9号で、
境界標とは、「筆界点にある永続性のある石杭 又は
金属標 その他これに類する標識をいう。」とされているからです。

つまり、境界標は、簡単に動くことがなく、
雨風などにも長期間耐えることができるような、
永続性があるものでなければなりません。

一時的な仮の境界標として木杭を使うこともありますが、
雨風などに長期間さらされると朽ちてしまうことがあり、
永続性はないと言えます。

そのため、どんなものでも境界標になるわけではないのです。

ただ、上記の5種類の境界標以外にも、
コンクリートへの刻印が境界標とされたり、仮杭としての木杭、
コンクリート壁の角などが境界点の目印とされていることもあります。

そこで、境界標にはどんなものがあるのか全てわかるように、
土地の境界確定業務を行っている土地家屋調査士が、
境界標の種類についてくわしく解説いたします。

スポンサーリンク
この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。

経歴:開業以来21年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら

この記事をすべて閲覧することで、
境界標には具体的にどんなものがあるのかが全てわかります。

それでは、境界標として設置されている実例を交えながら、
それぞれ見ていきましょう。

なお、この記事の内容は、下記の動画でも無料で何度でもご視聴いただけます。

金属標(きんぞくひょう)

境界標として境界点に設置された金属標の例
(境界標として境界点に設置された金属標の例)

金属標(きんぞくひょう)は、
金属プレートとも呼ばれていて、
市街地では境界標として非常に多く使われています。

なぜなら、土地の境界点の地面がコンクリートの場合は、
杭を打つことが困難なため、
境界標として金属標や金属鋲を設置することになるからです。

また、金属標にもいくつか種類があり、
下図1のような「矢印入りの金属標」や、

「矢印入りの金属標」の例
(図1:矢印入りの金属標の例)

下図2のような「矢印と境界文字入りの金属標」、

「矢印と境界文字入りの金属標」の例
(図2:矢印と境界文字入りの金属標の例)

下図3のような「一本線入りの金属標」、

「一本線入りの金属標」の例
(図3:一本線の金属標の例)

下図4のような「十字入りの金属標」、

十字入りの金属標の実例
(図4:十字入りの金属標の実例)

下図5のような「T字入りの金属標」があります。

「T字入りの境界標」の例
(図5:T字入りの境界標の例)

そして、境界を示すものとして、
最適な金属標を自由に選択して、
現地の境界点に設置するわけです。

ただ、上記の金属標の中でも、
下図6の「矢印と境界文字入りの金属標」が、
境界点を示す境界標として一番わかりやすいと思いませんか?

「矢印と境界文字入りの金属標」の例
(図6:矢印と境界文字入りの金属標の例)

当土地家屋調査士事務所では、
この「矢印と境界文字入りの金属標」を、
できるだけ使うようにしています。

また、市道と民地との境界点には、下図7・8のように、
「矢印と、境界・〇〇市又は〇〇区の文字入りの金属標」が、
境界標として設置されていることがあります。

市道と民地との境界点に設置された金属標の例1
(図7:市道と民地との境界点に設置された金属標の例1)
市道と民地との境界点に設置された金属標の例2
(図8:市道と民地との境界点に設置された金属標の例2)

国道と民地との境界点の場合には、下図9のように、
「矢印と、道界・国土交通省の文字入りの境界標」が、
境界標として設置されていることが多いです。

国道と民地との境界点に設置された金属標の例1
(図9:国道と民地との境界点に設置された金属標の例1)

ただし、国道の古い境界標については、
「国土交通省」という文字ではなく、下図10のように、
「建設省」という文字入りの境界標が設置されています。

国道と民地との境界点に設置された金属標の例2
(図10:国道と民地との境界点に設置された金属標の例2)

また、境界点を示す特殊な金属標として、
下図のような「矢印と距離入りの金属標」があります。

矢印と距離入りの金属標の例

これは、境界点に境界標を設置できないときに、
離れて設置されるものです。

なお、それぞれの金属標などのどこが境界点になるのかは、
境界標の見方を解説!境界標のどこが境界点?」で、
くわしく解説しています。

金属鋲(きんぞくびょう)

境界標として境界点に設置された金属鋲の例
(境界標として境界点に設置された金属鋲の例)

境界標の中でも特に注意しなければならないのが、金属鋲です。

なぜなら、金属鋲は境界標として設置されるだけでなく、
測量のための基準点や、道路の中心鋲として設置されたり、
上下水道・ガスの引き込み位置の目印に設置されたりもするからです。

そのため、現地に金属鋲がある場合には、
境界標なのか、測量基準点や上下水等の引き込み目印なのかを、
慎重に判断しなければなりません。

ちなみに、道路のアスファルト上に設置されている金属鋲は、
境界標ではなく、測量のための基準点や、
道路中心鋲、上下水などの目印のいずれかと考えて良いでしょう。

また、境界標としての金属鋲には、
下図11のような赤色プラスチックのかぶせがあるものや、

境界点に設置された金属鋲の例1
(図11:境界点に設置された金属鋲の例1)

下図12のような黄色プラスチックのかぶせがあるものがあります。

境界点に設置された金属鋲の例2
(図12:境界点に設置された金属鋲の例2)

ただ、下記の写真の中にも、
境界標としての金属鋲が設置されていますが、
どこにあるかわかるでしょうか?

見つけにくい金属鋲の例
(見つけにくい金属鋲の例)

コンクリートやアスファルトの色に溶け込んでいて、
見つけにくいかもしれません・・・。

元々白色プラスチックのかぶせ付きの金属鋲もありますが、
長い年月が経つと、赤色や黄色のプラスチックだったのが、
色あせて白色になっていることもあるのです。

また、下図13のように、
プラスチックのかぶせのない金属鋲を、
境界標として設置している場合もあります。

プラスチックのかぶせのない金属鋲の例
(図13:プラスチックのかぶせのない金属鋲の例)

特に、プラスチックのかぶせの無い金属鋲は、
現地でも見落としてしまう可能性が高くなるので、
境界標としての金属鋲を現地で探す際には、
よく注意して探す必要があります。

ちなみに、下図14のように、
準拠点(又は基準点)の文字のある金属鋲は、境界標ではなく、
測量の基準点なので間違えないようにしましょう。

測量の基準点として設置された金属鋲の例
(図14:測量の基準点として設置された金属鋲の例)

ここまで見てきましたように、金属鋲については、
通常、コンクリート地面に設置されるもので、
地面が土の所にはあまり設置されません。

なぜなら、コンクリートの地面に比べて土の地面はゆるく、
金属鋲は非常に小さいものなので、雨が降ったり、
金属鋲の上に車のタイヤが載ったりすると動く可能性が高いからです。

また、境界標として金属鋲が設置されている場合、
下図15のように、金属鋲の上にある十字の中心が境界点になります。

金属鋲が境界標の場合の境界点
(図15:金属鋲が境界標の場合の境界点)

プラスチック杭

境界標として境界点に設置されたプラスチック杭の例
(境界標として境界点に設置されたプラスチック杭の例)

プラスチック杭は、通常、
地面が土または砂利の所に設置されるものです。

略してプラ杭とも呼ばれていて、
プラスチック杭の頭部は、
下図16や17のような十字になっています。

プラスチック杭の頭部の例1
(図16:プラスチック杭の頭部の例1)
プラスチック杭の頭部の例2
(図17:プラスチック杭の頭部の例2)

他の境界標に比べて設置しやすく、
安価で見つけやすいため、
山林や畑の土地の境界標として設置されることが多いです。

ただ、現地にプラスチック杭が設置されていても、
必ずしも境界標とは限りません。

なぜなら、上下水道の引込みやガス管の位置を示したり、
家庭菜園などでプラスチック杭を利用している場合もあるからです。

コンクリート杭

境界標として境界点に設置されたコンクリート杭の例
(境界標として境界点に設置されたコンクリート杭の例)

コンクリート杭は、プラスチック杭と同じく、
境界点の地面が土または砂利の場合に、
境界標として設置されるものです。

ただ、設置するのに非常に手間と時間がかかるため、
金属標や金属鋲、プラスチック杭に比べると、
設置費用が割高になります。

そして、コンクリート杭にもいくつか種類があり、
下図18のような「矢印が刻まれたコンクリート杭」や、

矢印が刻まれたコンクリート杭の例
(図18:矢印が刻まれたコンクリート杭の例)

下図19のように「十字が刻まれたコンクリート杭」、

十字が刻まれたコンクリート杭の例
(図19:十字が刻まれたコンクリート杭の例)

下図20のように「T字が刻まれたコンクリート杭」、

赤でT字が刻まれたコンクリート杭の例
(図20:赤でT字が刻まれたコンクリート杭の例)

下図21のように「一本線が刻まれたコンクリート杭」があります。

一本線が刻まれたコンクリート杭の例
(図21:一本線が刻まれたコンクリート杭の例)

これらのコンクリート杭の中から、
境界を示す最適なものを自由に選択して、
現地の境界点に設置するわけです。

なお、各コンクリート杭などのどこが境界点になるのかは、
境界標の見方を解説!境界標のどこが境界点?」で、
くわしく解説しています。

石杭

境界標として境界点に設置された石杭の例
(境界標として境界点に設置された石杭の例)

石杭(御影石)は、プラスチック杭やコンクリート杭と同じく、
地面が土や砂利の場合に、境界標として設置されるものです。

金属標や金属鋲、プラスチック杭に比べると、
材料も設置費用もかなり割高になります。

その他の境界標

土地の境界点に設置される境界標としては、
金属標・金属鋲・プラスチック杭・
コンクリート杭・石杭の5種類が一般的です。

しかし、その他にも、境界標としての刻印(こくいん)や、
一時的な仮杭としての木杭、
コンクリート構造物の角などを境界点の目印にしている場合があります。

そこで、「刻印」、「木杭」、「境界点の目印」の順にご説明致します。

刻印(こくいん)

地域によっては、コンクリート地面やコンクリート基礎などに、
十字の刻印がされて、
十字の中心を境界標としている所もあります。

永続性がある境界標と言えますので、
現在でも、コンクリート基礎などに刻印をして、
新たな境界標とすることも可能です。

ただし、刻印の中心が鮮明に確認できる必要があります。

なお、刻印を境界標の一種にしている地域もありますが、
あまり一般的ではありません。

また、コンクリート面への刻印は、
測量の際の引照点として刻まれている場合もあるので、
注意が必要です。

木杭(仮杭)

一時的な仮杭として木杭を使うことがあります。

ただ、木杭は数年で腐ったり、
朽ちてしまうことがあるため、
永続性があるとは言えません。

そのため、境界点の一時的な仮杭として使用しても良いですが、
新たに境界標を設置する場合、
木杭は境界標としては認められていません。

境界点の目印

過去の地積測量図などを見ていますと、
地域によっては、コンクリート構造物などの角を、
境界点の目印として記載していることがあります。

たとえば、下図のようなコンクリート壁の角が境界点の場合、
地積測量図の各境界点や標種(ひょうしゅ:標の種類)の欄に、
「コンクリート壁角」などと記載されていることがあるのです。

境界の目印(標種)になっていることがあるコンクリート壁角の例
(コンクリート壁角の例)

しかし、これから新たに境界標を設置する場合には、
金属標や金属鋲などの5種類の境界標から1つを選択して、
現地の境界点に境界標として設置するのが一般的です。

なお、そもそも境界標とはどういうものなのかや、
どんな効力があって、誰のものなのか、境界標が無かったら・・
については、「境界標とは?土地家屋調査士が解説!」で、
くわしく解説しています。

まとめ

境界標の種類境界標の実例1境界標の実例2境界標の実例3
金属標金属標の拡大写真 十字マークの金属標の実例
金属鋲金属鋲の拡大写真
プラスチック杭
(プラ杭)
コンクリート杭
石杭
(御影石)
その他の境界標境界標としての刻印仮杭としての木杭境界の目印
(境界標の種類と実例の一覧)
スポンサーリンク