境界標とブロック塀が関係する場合について、
次のような質問をされることがあります。

  • 「境界標をブロック塀に設置するのは普通のこと?」
  • 「境界標がブロック塀にあると困ることは?」
  • 「境界標の設置とブロック塀の設置、どっちが先?」
  • 「自分のブロック塀に境界標を勝手に貼り付けられたら?」
  • 「境界標のあったブロック塀が壊されたら?」
  • 「ブロック塀は境界標になりうる?」
  • 「境界標をブロック塀に設置する際の注意点は?」

あなたも同じような疑問をお持ちなのではないでしょうか?

この記事では、境界確定業務を行っている土地家屋調査士が、
境界標とブロック塀に関する7つの疑問について、
1つ1つくわしく回答いたします。

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この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。

経歴:開業以来21年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら

境界標をブロック塀に設置するのは普通のこと?

境界標をブロック塀の上に設置したり、
ブロック塀の側面に境界標を貼り付けていることは、
普通によくあります。

なぜなら、場所によっては、
ブロック塀に設置するしか方法がない所もあるからです。

たとえば、下図1のように、
境界点がブロック塀の中心になる所です。

ブロック塀の上に設置された境界標
(図1:ブロック塀の上に設置された境界標)

このような所が境界点になる場合には、
ブロック塀を一部取り壊して境界杭を埋めるような方法以外、
境界標をブロック塀の上に設置するしかありません。

また、下図2のように、塀と塀のすき間が境界点になり、
塀と塀のすき間に境界標を設置することが無理な場合にも、
境界標をブロック塀の上に設置するしかありません。

ブロック塀の上に設置された境界標
(図2:ブロック塀の上に設置された境界標)

そして、下図3のように、地面がアスファルトの場合や、
デコボコしてすぐに割れそうなコンクリート地面の場合、
ブロック塀の側面などに境界標を設置することがあります。

ブロック塀の側面に設置された境界標
(図3:ブロック塀の側面に設置された境界標)

これはアスファルトの地面や、
デコボコしてすぐに割れそうなコンクリート地面よりも、
ブロック塀の下部に境界標を設置する方が良いと判断した事例です。

なぜなら、すぐに取れる可能性がある所に設置するよりも、
ブロック塀の基礎や下部に、
しっかりと境界標を固定した方がまだましだからです。

さらに、境界標の設置費用の問題も関係してきます。

金属プレートや金属鋲をブロック塀に設置するのは、
作業時間や労力があまりかからないので、
設置費用も比較的安価です。

逆に、コンクリート杭などを地面に設置するのは、
地面に穴を掘ったり、周りを固めたりする必要があり、
作業時間も労力もかかるため、設置費用も高くなります。

そのため、設置費用が高いコンクリート杭などよりも、
境界標をブロック塀に設置する方法を選択することも、
費用対効果を考えれば普通によくあることなのです。

なお、土地家屋調査士が境界標を設置する場合には、
基本的にブロック塀への設置は避けると思われますが、
地籍調査などでは、何も気にせずブロック塀に設置しているかもしれません。

ただ、境界標をブロック塀に設置してしまうと、
あとあと困ることがいくつかあります。

境界標がブロック塀にあると困ることは?

境界標がブロック塀にあると困ることは、
老朽化や建て替えなどでブロック塀を取り壊す際に、
境界標も一緒に撤去されてしまうことです。

境界標も一緒に撤去されてしまうと、
あとから境界標の復元作業が必要になってしまいます。

また、大きな地震が起きた場合、ブロック塀は高さがあるため、
倒れてしまうこともあります。

地震で倒壊したブロック塀
(地震で倒壊したブロック塀)

ブロック塀が倒れてしまった場合も、
あとから境界標の復元作業が必要になるため、
困ることになります。

さらに、倒壊するまでには至らなくても、
地震や老朽化でブロック塀が傾いてしまうと、
境界標の位置がずれてしまうという問題が起きるのです。

ブロック塀が傾いた場合も、
境界点の確認作業や復元作業が、
あとで必要になってしまい困ることがあります。

境界点の確認作業には、隣地所有者と現地立会が必要で、
境界標の復元作業には、十万円前後からの費用がかかります。

境界標の復元作業の例
(境界標の復元作業の例)

もし、ブロック塀ではなく、地面に境界標を設置していれば、
ブロック塀が壊れたり傾いても、境界標に影響はないので、
境界点の確認作業も復元作業も必要ないわけです。

つまり、境界標をブロック塀に設置していると、
あとで余分な作業と費用が発生してしまうリスクがあるのです。

そのため、ブロック塀への境界標の設置はできるだけ避けて、
道路側溝や、コンクリート打ちの地面に境界標を設置したり、
コンクリート杭などの杭を地面に打ち込むのが通例なのです。

道路側溝に設置された境界標
道路側溝に設置された境界標
コンクリート地面に設置された境界標
コンクリート地面に設置された境界標

もし、分譲地などを購入の際に、
境界標がブロック塀に設置されていれば、
他の場所に設置できないかを一度考えてみても良いかもしれません。

なぜなら、他に方法がある場合で購入前の段階なら、
境界標を設置し直してほしい旨を伝えると、
もしかすると対応してもらえるかもしれないからです。

なお、境界標の復元作業や費用については、
境界標を復元するには?復元方法と費用の目安」を参照下さい。

境界標の設置とブロック塀の設置、どっちが先?

先に、隣地所有者と境界点を確認した上で、
境界標を設置します。

その境界標をもとに、ブロック塀を設置する流れになるのです。

なぜなら、境界が現地でどこなのかわからない場合や、
境界標が現地にない場合、ブロック塀の設置工事をする業者も、
どこを目印に設置してよいかわからないからです。

逆に、ブロック塀を先に設置してしまうと、
境界について隣地所有者と認識が違っていれば、
ブロック塀が越境しているなどの問題が発生してしまいます。

最悪、ブロック塀を取り壊して、
設置のやり直しになりかねません。

そのため、ブロック塀を新設したい・造り直したい場合は、
最初に隣地所有者と境界点について現地確認を行い、
境界確認書を作成して境界標を現地に設置してから、
それを目印にしてブロック塀の設置工事を行うと安心なのです。

なお、境界標がすでに現地に設置されている場合も、
その境界標の位置について問題ないかを、
隣地所有者と現地確認して、境界確認書を作成をしておいた方が良いです。

境界確認書とは具体的にどのような書類なのかについては、
「境界確認書とは?」を参照下さい。

自分のブロック塀に境界標を勝手に貼り付けられたら?

通常でしたら、境界標を設置する場合、
接している土地の所有者全員と現地立会を行い、
境界点の確認をした上で境界標の設置を行います。

自分のブロック塀に境界標を勝手に貼り付けられたら、
まずは貼り付けた業者などを探して事情を聞いた上で、
納得がいかなければ、撤去してもらうと良いです。

なぜなら、境界点ではない自分のブロック塀に、
境界標を勝手に貼り付けられてしまうと、
あとあと自分が困ることになるからです。

業者などが応じないような場合には、
お近くの土地家屋調査士や弁護士に相談する方法があります。

なお、境界標を勝手に設置するのは罪になる可能性があり、
境界標は勝手に設置できる?」でくわしく解説しています。

境界標のあったブロック塀が壊されたら?

(壊されたブロック塀)

もし、境界標のあったご自分のブロック塀を、
勝手に取り壊されたのであれば大問題です。

なぜなら、刑法262条の2で定められているように、
境界標を損壊・移動・除去した者は、
5年以下の懲役又は50万円以下の罰金になるからです。

勝手にブロック塀を取り壊した業者や、
隣地所有者と話をして、
納得がいかなければ、弁護士に相談すると良いでしょう。

また、車等がブロック塀に突っ込んで壊されたという場合には、
境界標の復元ができるかどうか、
お近くの土地家屋調査士に相談されると良いです。

壊されたブロック塀
(壊されたブロック塀)

現地の境界標が無くなったり、動いてしまったとしても、
地積測量図(または境界確定図)があり、
現地に基準点や準拠点が残っていれば、費用はかかりますが、
境界標を復元することは可能だからです。

なお、境界標の復元や費用については、
境界標を復元するには?復元方法と費用の目安」を参照下さい。

ブロック塀は境界標になりうる?

ブロック塀は、境界の目印になっていることがあります。

たとえば、ブロック塀の中心が土地の境界になっていたり、
ブロック塀いっぱいが自分の敷地、
または、相手の敷地といった感じです。

また、過去の地積測量図などでも、境界の標種として、
ブロック塀基礎角などと記載されていることもあります。

しかし、ブロック塀自体に永続性があるとは言えないことから、
現在では、ブロック塀は境界標になりえません。

現在、境界標になりえるのは、
大きく分けて次の5種類になります。

金属標の拡大写真金属鋲の拡大写真プラスチック杭の拡大写真コンクリート杭の拡大写真石杭の拡大写真
金属標金属鋲プラスチック杭コンクリート杭石杭

ただし、この5種類の他にも、
地域によっては刻印などもありますので、
くわしくは、「境界標の種類を解説!5種類の境界標と実例」を参照ください。

境界標をブロック塀に設置する際の注意点は?

どうしても境界標をブロック塀に設置するしかない場合、
できるだけブロック塀の基礎など下の方に設置すると良いです。

なぜなら、ブロック塀の上部分は、
地震や老朽化によって傾いたり、動きやすいからです。

ブロック塀が傾いたり、動いたりすると、
現地の境界標の位置がずれてしまいます。

ブロック塀の基礎であれば、ブロック塀の傾きによって、
境界標が動いてしまうという心配がほぼなくなるからです。

また、ブロック塀に穴をあけて金属鋲を設置する場合は、
しっかりと固定はされるので大丈夫ですが、
金属プレート(金属標)をボンドで貼り付けるだけというのは、
剥がれなどの不安が残ります。

そのため、金属プレートをブロック塀に設置する場合、
アンカー式またはボルト式で、
コンクリート用のボンドも裏面に塗って設置すると良いでしょう。

まとめ

  • 境界標をブロック塀に設置することは普通にあります。
  • 境界標がブロック塀にあると困ることは、取り壊す場合に、
    境界標も一緒に撤去になってしまうことです。
  • 境界標を設置してからブロック塀を設置するのが基本です。
  • 境界標を勝手に貼り付けられたら事情の確認が必要です。
  • 境界標のあったブロック塀が壊されたら、
    境界標の復元が必要になります。
  • ブロック塀自体は、現在は境界標になりえません。
  • 境界標をブロック塀に設置する際は、
    ブロック塀基礎などできるだけ下部に設置して、
    アンカー式またはボルト式の境界標を使用すると良いです。
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