この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。

経歴:開業以来21年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら

現地に境界標が設置されていれば、
境界は確定していると思っていませんか?

実は、必ずしもそうではありません。

現地に境界標が設置されていても、
境界が確定している場合もあれば、
未確定の場合もあるのです。

そこでこの記事では、現地に境界標が設置されている場合に、
境界は確定しているのかどうかについて、
土地の境界確定業務を行っている土地家屋調査士が、
くわしく解説致します。

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この記事を全て閲覧する事で、境界標が設置されている場合に、
境界が確定しているのか、境界が未確定なのかがわかります。

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境界標があれば、境界は確定してる?

現地に何らかの境界標が設置されていれば、
そこが境界点になると推測することはできます。

なぜなら、境界標というのは、通常、
隣地所有者と境界の立会い確認を行ってから、
お互い境界点について納得した上で設置するものだからです。

(隣地所有者と境界立会い後に境界標を設置)

しかし、境界標の種類や、境界に関する資料、
隣地所有者の証言によっては、
境界標なのかどうか疑わしい場合や、
境界標とは言えない場合もあります。

そのため、境界標が現地に設置されている場合、
本当に境界標かどうかや、境界が確定しているかどうかは、
次の3つの内容から判断する必要があるのです。

  1. 現地の境界標の種類から境界の確定を判断
  2. 境界に関する資料から境界の確定を判断
  3. 隣地所有者の証言から境界の確定を判断

それぞれ順番に解説いたします。

1.現地の境界標の種類から境界の確定を判断

境界標と言われるものとしては、一般的に、
下図1のような金属標、金属鋲、プラスチック杭、
コンクリート杭、石杭があります。

金属標、金属鋲、プラスチック杭、コンクリート杭、石杭の例
(図1:金属標、金属鋲、プラスチック杭、コンクリート杭、石杭の例)

これらの境界標の内、下図2のように、
矢印又は十字入りの金属標、コンクート杭、石杭であれば、
それが境界点を示す物として強い証拠になりえます。

矢印又は十字入りの金属標、コンクリート杭、石杭の例
(図2:矢印又は十字入りの金属標、コンクリート杭、石杭)

しかし、金属鋲やプラスチック杭が設置されているだけでは、
そもそも境界標ではない場合もありますし、
境界標とは言えない場合もあるのです。

金属鋲又はプラスチック杭
(金属鋲又はプラスチック杭)

たとえば、金属鋲については、境界標としてではなく、
測量の基準点として、現地に設置されている場合もあります。

その場合は、当然、境界標ではありません。

また、境界以外の目的で金属鋲を打っている場合もあり、
その場合も境界標とは言えません。

プラスチック杭についても、境界標としてではなく、
測量の基準点として、現地に設置されている場合もあり、
その場合は、当然、境界標ではありません。

ただ、プラスチック杭の場合、下図3のように、
番号付きの地籍調査などのラベルが貼られていれば、
境界標として設置されていると推測できます。

地籍調査などのラベル付きプラスチック杭
(図3:ラベル付きプラスチック杭)

しかし、畑や山林など、地面が土や砂利などの場所では、
境界以外の目的でプラスチック杭を打っていることもあり、
その場合も、境界標とは言えないのです。

また、境界標が現地に設置されていても、
境界に関する資料と照らし合わせてみたり、
隣地所有者と境界の確認を行ってみないと、
境界が確定しているかどうかは、はっきりしないこともあります。

なぜなら、現地に境界標らしきものが設置されていても、
境界に関する資料が無かったり、資料内容と一致しなかったり、
隣地所有者と境界の認識も違っていれば、
境界が確定しているとは言えないからです。

つまり、現地に境界標があるというだけでは、
それが本当に境界標なのかどうかや、
境界が確定しているとは言い難いということです。

なお、境界標の種類については、
境界標の種類を解説!5種類の境界標と実例」で、
くわしく解説しています。

2.境界に関する資料から境界の確定を判断

まず、境界に関する資料としては、
下図4のような測量図付きの境界確認書があります。

測量図付の境界確認書のイメージ
(図4:測量図付の境界確認書のイメージ)

また、下図5のような測量図付きの隣接境界線証明書の場合も、
境界に関する資料と言えます。

測量図付き隣接境界線証明書のイメージ
(図5:測量図付き隣接境界線証明書のイメージ)

ただし、境界確認書や隣接境界線証明書には、
少なくとも隣地所有者の署名・捺印が必要です。

もし、隣地所有者の署名又は捺印が無い場合は、
境界確認書や隣接境界線証明書としての意味はありません。

なお、境界確認書のタイトルが筆界確認書の場合もありますが、
内容はほぼ同じと考えてかまいません。

ちなみに、境界確認書と隣接境界線証明書の違いは、
隣地所有者と、お互いが署名・捺印した書類なのか、
隣地所有者のみが、署名・捺印した書類なのかの違いです。

もし、測量図付きの境界確認書又は隣接境界線証明書があれば、
現地に設置されている境界標が、境界点と一致するかどうかを、
添付の測量図などから判断することになります。

また、境界に関する資料としては、
下図6のような法務局に提出されている地積測量図もあります。

法務局に提出されている地積測量図のイメージ
(図6:法務局に提出されている地積測量図のイメージ)

上図6のような座標法による地積測量図の場合、
現地に境界標、又は基準点が、少なくとも2点以上残っていれば、
現地に設置されている境界標が、境界点と一致するかどうかを確認できるのです。

ただ、復元測量など測量を伴う作業となりますので、
通常、費用は多少かかりますが、
お近くの土地家屋調査士に依頼することになります。

なお、下図7のような三斜法による古い地積測量図では、
復元能力が無い測量図のため、現地に設置されている境界標が、
境界点と一致するかどうかの確認が難しく、無理な場合もあります。

三斜法による古い地積測量図のイメージ
(図7:三斜法による古い地積測量図のイメージ)

つまり、復元可能な座標による測量図付きの境界確認書や、
隣接境界線証明書、地積測量図等の境界に関する資料があれば、
現地に設置されている境界標が、本当に境界標なのかどうかや、
境界が確定しているのかどうかも、ある程度判断できるということです。

境界確認書とは具体的にどんな書類なのかについては、
境界確認書とは?土地境界確認書に署名すべき?」で、
くわしく解説しています。

地積測量図とはどんな図面なのかや、その見方や取得方法は、
地積測量図とは?地積測量図の見方と取得」を参照下さい。

3.隣地所有者の証言から境界の確定を判断

境界に関する資料を作成した当時に、
境界の確認の立会いをした隣地所有者から、
隣地所有者が別の人に変わっている場合には、
その新しい隣地所有者と、境界の確認が必要と言えます。

境界に関する資料作成当時の隣地所有者
(境界に関する資料作成当時の隣地所有者)

なぜなら、現在の新しい隣地所有者の方が、
現地に設置されている境界標のことを知らなかったり、
境界標とは別の所を、境界と認識している可能性もあるからです。

新しい隣地所有者
(新しい隣地所有者)

そのため、復元能力のある座標による測量図付き境界確認書や、
隣接境界線証明書がある場合であっても、
それらの書類に署名・捺印した人から所有権が移転していれば、
新たな所有者と、境界の確認が必要と言えるのです。

ちなみに、境界確認書又は隣接境界線証明書には、
下図8のように、「第三者に所有権を移転した場合には、
境界の確認内容を承継する。」という一文が入っていることもあります。

第三者に所有権移転の場合に境界確認が承継の旨の境界確認書の例
(図8:第三者に所有権移転の場合に境界確認が承継の旨の境界確認書の例)

しかし、境界確認書や隣接境界線証明書については、
基本的に、当事者同士の契約及び確認的な内容となり、
第三者に自動的には引き継がれないと考えておいた方が良いです。

そのため、境界確認書や隣接境界線証明書の作成当時から、
隣地所有者が変わっている場合には、
現在の隣地所有者と、現地で境界立会いを行い、
現地にある境界標が、境界点で良いかどうかの確認が必要なのです。

以上のように、現地に境界標が設置されている場合には、通常、
境界標の種類や、境界に関する資料、隣地所有者の証言等から、
本当に境界標なのかどうかの確認と、
境界が確定しているのかどうかの判断が必要になります。

つまり、現地に境界標がある=境界が確定しているとは、
必ずしも言えないということです。

なお、境界標とは何かについては、
境界標とは?土地家屋調査士が解説!」で、
くわしく解説しています。

土地の境界線を調べたり、土地の隣地所有者を調べる方法は、
土地の境界線を調べる3つの方法」や、
土地の所有者を調べる3つの方法」を参照下さい。

境界が確定していると言えるのは?

境界が確定していると言えるかどうかは、
現地に設置されている境界標だけで判断するのではなく、
通常、次の3つの根拠から判断されます。

  • 現地にある境界標などの物証、
  • 境界確認書又は隣接境界線証明書などの書証、
  • 隣地所有者の人証

この3つの根拠の中でも、特に重要なのが、
座標による測量図付きの境界確認書又は隣接境界線証明書、
法務局に提出されている座標法の地積測量図などの書証です。

なぜなら、現地に境界標が設置されていない箇所があっても、
座標による測量図付き境界確認書などの書証があり、
現地に境界点の復元が可能な状態であれば、
通常、境界は確定していると言えるからです。

もちろん、境界確認書又は隣接境界線証明書などは、
隣地所有者などの署名・捺印がされていることが必須で、
隣地所有者と境界確認済みであることが前提となります。

また、現地復元能力があり、座標による地積測量図が、
ここ十数年以内に法務局に提出されている場合も、
通常、その土地の境界は確定していると言えます。

逆に、現地に境界標が設置されていたとしても、
座標による測量図付き境界確認書などの書証が無ければ、
境界が確定しているとは言い難いのです。

もし、境界が確定していなければ、通常、
土地の売却も難しく、分筆登記や地積更正登記もできませんし、
いつ境界トラブルが発生してもおかしくない状態が、
将来に渡って続くことになります。

境界が確定していないため、土地の売却が難しく、境界トラブル発生

そのため、境界が確定していると言えるためには、
隣地所有者と境界点や境界標を確認して、
必要であれば、現地に境界標の新設置又は再設置を行い、
測量図付きの境界確認書又は隣接境界線証明書などに、
署名・捺印をすると良いということになります。

そして、できれば、土地の分筆登記又は地積更正登記によって、
現地復元可能な座標による地積測量図を、
法務局に提出しておくと安心です。

なお、境界確定とは何か、境界確定の費用については、
境界確定とは?境界確定の費用はいくら位?」で、
くわしく解説しています。

また、境界確認書とは具体的にどんな書類なのかについては、
境界確認書とは?土地境界確認書に署名すべき?」を参照下さい。

地積測量図とは具体的にどんな書類なのかについては、
地積測量図とは?地積測量図の見方と取得」で、
くわしく解説しています。

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なお、境界の確定や、境界トラブルを未然に防ぐための知識、
実務などについての書籍も、いくつか出版されておりますので、
合わせてご確認いただければと思います。

実務必携境界確定の手引 [ 江口滋 ]

ケースでみる 境界確認の困難要因と実務対応

ポイントがよくわかる マンガ不動産境界入門 6訂版 (図解不動産業) [ 西本 孔昭 ]

よくわかる境界のトラブルQ&A 第2版