土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。
経歴:開業以来21年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
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「土地の売却で境界確定が必要と言われた」
「境界確定の具体的な流れを知りたい」
「境界標があれば、境界は確定している?」
「境界確定図は、市役所でも取れる?」
「境界確定の費用が、100万円は妥当?」
このような理由で、境界確定とは具体的に何かを知りたいし、
境界確定の費用はいくら位なのかも知りたい、
という人も多いのではないでしょうか?
この記事では、境界確定とは何かと、境界確定の費用について、
土地の境界確定業務を行っている土地家屋調査士が、
わかりやすく解説致します。
この記事では、一般的に言われる境界確定とは何かと、
境界確定の費用の目安が分かります。
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記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。
境界確定とは?
土地を売ったり貸したりする際に言われる境界確定とは、
まず、下図1のように、隣地所有者と境界立会いを行い、
全ての隣地との各境界点を現地で明確にします。
そして、現地に設置した境界標などの測量を行い、
下図2のような測量図面付きの境界確認書などによって、
書類上でも、各境界点を明確にすることです。
つまり、各境界点については、
「土地の隣地所有者全員と合意しているので、
何も問題ありませんよ」ということを、
第三者にも証明できるようにすることとも言えます。
具体的には、次の状態であれば、通常、
境界が確定していると言えます。
- 現地の各境界点が、境界標、又は構造物で明確になっている。
- 測量図面付きの境界確認書又は隣接境界線証明書などに、
隣地所有者全員の署名・押印がされている。 - 10年程度以内に作成された座標法による地積測量図が、
法務局に提出されている。
ただし、各境界点が現地で明確になっていても、
測量図付きの境界確認書又は隣接境界線証明書等が無い場合や、
地積測量図も無い場合は、第三者に証明できる書類がないため、
通常、境界が確定しているとは言い難いです。
また、土地に地積測量図があっても、下図3のように、
昭和時代に作成された古い三斜法による地積測量図の場合には、
通常、境界が確定しているとは言えません。
一般的に境界が確定していると言えるのは、各境界点が、
境界標又は構造物によって現地で明確になっており、
復元性のある測量図付きの境界確認書などに、
隣地所有者全員の署名・押印がされている状態と言えます。
又は、過去10年程度以内に作成された地積測量図が、
法務局に提出されており、
境界標が現地の各境界点に設置されている場合にも、
境界が確定していると推測できます。
逆に言えば、現地に境界標が無い場合や、
隣地所有者の署名・押印がされた境界確認書などの書類も、
過去10年程度以内に作成されて、
法務局に提出されている地積測量図も無い場合には、
境界が確定しているとは言い難いのです。
なお、境界確定が必要な場合には、
その土地の所有者から土地家屋調査士に依頼して、
境界確定作業を進めるのが一般的です。
境界確定の流れ
一般的に言われる境界確定作業は、
だいたい、次の1~7の流れで進められます。
- 土地の登記情報や地積測量図などの資料調査をする。
- 隣地所有者全員に境界立会いのお願いをする。
- 立会い日時に、現地で境界の確認を行う。
- 境界確認済みの各境界点などの測量を行う。
- 測量図面付きの境界確認書などを作成する。
- 境界確認書または隣接境界線証明書などに、
隣地所有者全員の署名・押印をもらう。 - もし必要であれば、境界確定図の作成や、
土地の地積更正登記又は分筆登記などを行う。
少なくとも1~6までの作業を、過去に行っていて、
全ての隣地所有者と境界について合意していれば、
境界の確定が出来ていると言えます。
なお、境界確定(確定測量)の流れについては、
「確定測量の流れと注意点」で、
くわしく解説しています。
境界標があれば、境界は確定している?
たとえば、下図4のような境界標が、現地に設置されていれば、
そこが境界点になると推測することはできます。
なぜなら、通常、境界標というのは、
隣地所有者と境界の確認を行ってから、
お互いが境界点について納得した上で設置するものだからです。
しかし、下図5のような金属鋲やプラスチック杭が、
現地に設置されていたとしても、それが境界標かどうかは、
境界に関する測量図などの資料と照らし合わせてみたり、
隣地所有者と境界の確認を行ってみないと、はっきりしないこともあります。
もし、現地に設置されている境界標が、
下図6のような、矢印のある金属プレート又はコンクリート杭、
若しくは十字のコンクリート杭の場合には、
境界点を示すかなり強い証拠になり得ます。
ただ、その場合でもやはり、その境界標が、
境界点を示している事の確認を隣地所有者とした上で、
測量を行い、境界確認書又は隣接境界線証明書などの書面に、
お互いの署名・押印がされていることが重要となります。
つまり、現地に境界標と思われるものがあるだけでは、
境界が確定しているとは、必ずしも言えないということです。
境界標と推測できる物が現地に設置されている場合、
基本的に、現地で隣地所有者と境界の確認を行い、
お互い境界点について合意できて、その内容を、
測量図付きの境界確認書などの書面で証明できてはじめて、
境界が確定していると言えるのです。
なお、境界標が現地に設置されていれば、
境界は確定していると言えるのかについては、
「境界標があれば、境界は確定してる?実は…」で、
くわしく解説しています。
また、現地で隣地所有者と行う境界確認については、
「土地境界線の立会いの手順と注意点」や、
「土地境界線の立会い時の7つの注意点」を参照下さい。
測量図面付きの境界確認書については、
「境界確認書とは?土地境界確認書に署名すべき?」で、
くわしく解説しています。
境界確定図は市役所でも取れる?
境界確定図というのは、過去の所有者を含む土地の所有者が、
土地の周囲の隣地所有者と境界の確認を行い、
確認した各境界点を測量して、図面化したもので、
通常、土地の所有者が保管しているものです。
もし、そういった境界の確認や測量などを、
土地の所有者が、過去に行っていなければ、
その土地の境界確定図は、存在しないことになります。
そのため、境界確定図という名称の図面は、
市役所や法務局では管理していないので、
市役所や法務局で取ることはできません。
ただし、市役所が所有又は管理している土地については、
境界確定に関する資料や、確定図面がある土地もあります。
もし、市が管理する道路や、里道又は水路と接する場合、
それらの土地との境界について、過去に境界確定していれば、
その時の境界確定の図面などを取得できることもあるのです。
実際に、土地家屋調査士が境界確定作業を進める場合、
隣接地に、市が管理する里道又は水路があれば、
市の担当課で、境界確定の資料があるかどうかを、
最初に調べるのが通常の手順となっています。
また、その土地が、過去に地籍調査事業、または、
土地区画整理事業を行った区域の土地でしたら、
市役所の地籍調査の係りなどで、通常、
境界確定図とも言える測量図面を管理しています。
その測量図面については、通常、
誰でも取得することが可能です。
しかし、地籍調査事業や土地区画整理事業を行っていない場合、
そういった測量図面は存在しないことになります。
なお、確定測量図については、
「確定測量図とは?地積測量図や境界確定図との違い」で、
くわしく解説しています。
境界確定の費用はいくら位?
境界確定にかかる費用については、
その土地の面積や、隣地所有者の人数と生死の状況、
市や県などの役所が管理している土地と接しているかどうか、
測量がやりやすい状況かどうかなどで、大きく違ってきます。
また、依頼する土地家屋調査士事務所によっても、
費用に多少の違いがあります。
そのため、境界確定の費用については、
実際に土地家屋調査士事務所に見積り依頼をして、
確かめてみるのが一番良いと言えるのです。
ただ、そうはいっても、境界確定にかかる費用について、
ある程度の相場を知っておきたいということもあります。
たとえば、30坪程度の小さな土地の境界確定の費用が、
100万円も200万円もするというのは、
あまりにもおかしな話になるのですが、
土地家屋調査士などでない場合、それがわからないからです。
そこで、土地の面積が50坪で、165㎡の土地の場合、
境界確定にかかる費用としては、通常、
30万円前後になるのではと考えます。
ただし、里道(農道)又は水路の土地と接している場合には、
15万~20万円前後が、さらにプラスされるため、
境界確定の費用としては、通常、
合計45万~50万円前後になると思われます。
次に、土地の面積が100坪で、330㎡の土地の場合、
面積が増える分、境界確定にかかる費用も増えるため、
通常、大体50万円前後になるのではと考えます。
ただし、里道(農道)又は水路の土地と接している場合には、
20万~25万円前後が、さらにプラスされるため、
境界確定の費用としては、通常、
合計70万~75万円前後になると思われます。
ここでは、50坪と100坪の各土地の場合で、
境界確定の費用の目安を挙げてみましたが、
200坪や300坪の土地の場合には、100坪の場合に比べて、
2倍の費用や、3倍の費用になっても、おかしくないということです。
このように、境界確定にかかる費用については、
土地の面積と、隣接地に里道又は水路があるかどうかで、
大きく違ってくる傾向があるのです。
あとは、隣地所有者が亡くなっている場合には、
その相続人を調べる作業が必要になるため、
その分、別途費用が加算されることもありえます。
なお、ここまで、境界確定の費用の目安を挙げてみましたが、
あくまで、当土地家屋調査士事務所の場合の目安となり、
土地の案件や、土地家屋調査士事務所ごとに、
費用については、多少異なってきますこと、ご理解いただければと思います。
ちなみに、境界確定は、一般的に確定測量とも言われるため、
境界確定=確定測量と理解してかまいません。
確定測量については、
「確定測量とは?境界確定測量は必要?」や、
「確定測量の流れと注意点」で、
くわしく解説しています。
また、地積測量図とは具体的にどんな図面か、
地積測量図の見方や取得については、
「地積測量図とは?地積測量図の見方と取得」を参照下さい。
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