土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。
経歴:開業以来21年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
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土地の地積測量図を調べたいけど、
どんな図面なのかわからないし、
地積測量図の見方や取得もよくわからない、
という人も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、地積測量図とはどんな図面なのか、
地積測量図の見方と取得について、
土地の境界確定業務を行っている土地家屋調査士が、
くわしく解説いたします。
この記事をすべて閲覧することで、
地積測量図について知りたいことがわかります。
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記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。
地積測量図とはどんな図面?
地積測量図とは、下図1のように、一筆の土地ごとに、
土地の所在地番、土地の形状および隣地との位置関係、
境界標、土地の面積及び求積方法などが記載された図面のことです。
地積測量図は、里道(農道)や水路の払下げ時の土地表題登記、
土地を数筆に分ける分筆登記や、
土地の面積を変更する地積変更又は地積更正登記の申請時に、
土地の面積の根拠として、法務局に提出する図面です。
ただ、地積測量図は、作成された時期によって、
次の3種類があります。
- 三斜法による古い地積測量図
- 任意座標による地積測量図
- 世界測地系の座標による地積測量図
それぞれ1つずつ解説していきます。
1.三斜法による古い地積測量図
まず、三斜法による地積測量図というのは、
下図2のような図面のことです。
三斜法による地積測量図は、土地の中に三角形を作り、
三角形の面積を合計して、土地の面積を計算した図面になります。
このような三斜法による地積測量図は、
昭和35年から昭和50年代にかけて作成されたもので、
現地と照合するのが難しいものが多く、
現地復元性もないので、あまり正確な図面とは言えません。
そのため、このような三斜法による地積測量図の場合、
土地が正方形で、全辺長が記載されているような図面以外は、
地積測量図が無い場合と同じと思った方が良いです。
2.任意座標による地積測量図
次に、任意座標による地積測量図というのは、
下図3のような図面のことで、世界測地系の座標ではなく、
任意の座標系によって求積された図面になります。
任意座標というのは、たとえば、基準点の1つの座標値を、
X座標100.000、Y座標100.000として、その座標を基準にして、
他の準拠点や、境界点の座標値を求めたものです。
ただ、基準の座標をX座標200.000、Y座標200.000にしたり、
X座標0.000、Y座標0.000のように切の良い数値にするなど、
地積測量図の作成者が任意で決めています。
このような任意座標による地積測量図は、
昭和60年頃から現在にかけて作成されているもので、
現地復元性があり、測量精度も高く、ある程度正確な図面と言えます。
3.世界測地系の座標による地積測量図
世界測地系の座標による地積測量図というのは、
下図4のような図面のことです。
このような世界測地系の座標による地積測量図は、
平成14年頃から現在にかけて作成されているもので、
現地復元性があり、測量精度も高く、非常に正確な図面と言えます。
世界測地系の座標による地積測量図かどうかの見分け方は、
地積測量図に「世界測地系」という文字、または、
座標系が「Ⅵ系」や「Ⅸ系」等と記載されているかどうかです。
なお、平面直角座標系については、日本の地域によって、
主にⅠ系~XIII系など、次のように決まっています。
- Ⅰ系・・・長崎県
- Ⅱ系・・・福岡県 佐賀県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県
- Ⅲ系・・・山口県 島根県 広島県
- Ⅳ系・・・香川県 愛媛県 徳島県 高知県
- Ⅴ系・・・兵庫県 鳥取県 岡山県
- Ⅵ系・・・京都府 大阪府 福井県 滋賀県 三重県 奈良県 和歌山県
- Ⅶ系・・・石川県 富山県 岐阜県 愛知県
- Ⅷ系・・・新潟県 長野県 山梨県 静岡県
- Ⅸ系・・・東京都 福島県 栃木県 茨城県 埼玉県 千葉県 群馬県 神奈川県
- Ⅹ系・・・青森県 秋田県 山形県 岩手県 宮城県
- Ⅺ系、Ⅻ系、XIII系・・・北海道
残地求積による地積測量図
平成17年3月7日よりも前に作成された地積測量図の場合、
下図5のように、分筆する土地のみを求積して、残りの部分を、
全体の登記面積から差し引いただけというものもあります。
これは、残地分筆または残地求積と言われる地積測量図で、
残地(10-1の土地)については、通常、測量をしていないので、
残地部分については、地積測量図が無い場合と同じと考えて良いです。
地積測量図が無い土地
全ての土地に、地積測量図があるわけではありません。
なぜなら、登記申請に地積測量図の添付が必要になったのは、
昭和35年4月1日から現在までだからです。
そのため、昭和35年4月1日以降に、
里道(農道)又は水路の払下げによる土地表題登記や、
分筆登記、地積変更又は地積更正登記を行った土地には、
原則、地積測量図があります。
逆に、昭和35年4月1日以前に、
分筆登記または地積更正登記などがされた土地や、
今まで、土地表題登記、分筆登記、地積更正登記などを、
一度も行っていない土地には、地積測量図はありません。
ただし、地積測量図が無い土地であっても、
過去に地籍調査事業や土地区画整理事業が行われた土地なら、
土地の境界点や基準点などの座標及び街区データが、
通常、事業を行った市区町村の役所に保管されており、
誰でも閲覧や取得が可能となっています。
また、地積測量図のある土地であっても、
下図6のような残地求積の土地については、
残地の形状や面積は、ほとんどあてになりません。
そのため、残地として求積されている土地については、
他にその土地の地積測量図がなければ、
地積測量図は無いという扱いになります。
もし、土地の地積測量図が法務局に備わっていれば、
土地の境界線を調べることも可能です。
土地の境界線を地積測量図で調べる方法については、
「土地の境界線を地積測量図で調べる方法」で、
くわしく解説しています。
地積測量図の見方
現在、地積測量図には、実際に測量した土地の形状以外に、
次の1~11の事項を記載しなければならないことが、
不動産登記規則第77条で定められています。
- 地番区域の名称
- 方位
- 縮尺
- 地番(隣接地の地番を含む。)
- 地積及びその求積方法
- 筆界点間の距離
- 平面直角座標系の番号又は記号
- 筆界点の座標値
- 境界標があるときは、境界標の表示
- 測量の年月日
- 基準点や引照点の座標値
これらの記載事項以外にも、地積測量図には、申請人の氏名と、
図面作成者の住所・氏名・作成年月日も記載されます。
1つずつその見方を解説していきます。
1.地番区域の名称
地番区域の名称というのは、下図7の赤枠内のように、
地積測量図の右上に記載されている土地の所在のことです。
土地の所在は、県名から記載されている場合もあれば、
市区町村名から記載されている場合もあります。
2.方位
地積測量図には、下図8のように方位の記載があり、
図面のどの方向が北になるのか、
一目でわかるようになっています。
地積測量図は通常、北が上になるように作成されていますが、
土地の形状によっては、北が斜め上の場合や、
北が右または左で作成されている場合もあるのです。
なお、方位のマークのデザインは、
上図8の様な簡易的なものから、凝ったデザインまで、
地積測量図の作成者それぞれで異なります。
3.縮尺
下図9のように、地積測量図の右下に縮尺欄があり、
図面の縮尺がわかるようになっています。
地積測量図は、原則、250分の1の縮尺で作成されますが、
土地の形状やその他の事情により、500分の1の縮尺や、
1000分の1の縮尺で作成される場合もあります。
4.地番(隣接地の地番を含む。)
地積測量図の右上には、下図10のように地番の記載欄があり、
土地の地番がわかるようになっています。
また、該当土地の地番だけでなく、下図11のように、
図面には隣接地を含む各土地の地番が記載されています。
このように、隣接地を含む地番を図面に記載することにより、
各土地の位置関係が明確にわかるようになっているのです。
なお、土地の地番の調べ方については、
「地番の調べ方:土地の地番を調べる5つの方法」で、
くわしく解説しています。
5.地積及びその求積方法
地積測量図には、通常、図面の左側に、
土地の地積及びその求積方法が記載されています。
具体的には、下図12のような座標による地積測量図の場合、
座標法による求積方法と、土地の地積が記載されています。
下図13のような三斜法による地積測量図の場合は、
土地を三角形に区切った計算方法などが記載され、
土地の地積とその計算方法がわかるようになっているのです。
なお、三斜法による古い地積測量図については、
「土地境界線の立会や確認時に古い地積測量図を見る際の注意点」で、
くわしく解説しています。
6.筆界点間の距離
地積測量図に記載されている土地の形状には、
下図14のように、各筆界点(境界点)間の距離が記載されています。
単位はメートル単位で、小数第二位まで記載されている場合と、
小数第三位まで記載されている場合があるので、少なくとも、
センチまたはミリ単位まで、筆界点間の距離がわかるのです。
7.平面直角座標系の番号又は記号
地積測量図には、国土調査法施行令2条1項1号に規定する、
平面直角座標系の番号又は記号を記載することになっています。
平面直角座標系には、世界測地系と任意座標系があり、
世界測地系の場合は、下図15のように、
「世界測地系」という文字や、
座標系が「Ⅰ系~XIII系」のいずれかの記載があります。
逆に、「世界測地系」といった記載がなく、
座標系として「Ⅰ系~XIII系」のいずれかの記載も無い場合や、
任意座標という記載がある場合は、任意座標系と判断できます。
ちなみに、三斜法による地積測量図の場合には、
座標値による図面ではないので、
平面直角座標系の番号又は記号の記載はありません。
なお、世界測地系による地積測量図の場合は、
公共基準点を使用して測量をしているので、
現地の境界標が無くなったり、動いたとしても、
公共基準点から復元することが可能です。
ただし、公共基準点から現地までの基準点測量が必要な関係上、
地積測量図を作成する際の測量費用が高くなる傾向があります。
また、任意座標による地積測量図の場合でも、
現地の境界標が無くなったり、動いたとしても、
任意の基準点が現地に残っていれば、
境界標を復元することが可能です。
なお、境界標の復元については、
「境界標や境界杭の復元方法と復元費用」や
「境界標を復元するには?復元方法と費用の目安」で、
くわしく解説しています。
8.筆界点(境界点)の座標値
座標法による地積測量図には、下図16のように、
各筆界点(境界点)の座標値の記載があります。
座標値というのは、X座標とY座標で表したもので、
単位はメートルで、小数第3位まで表示されています。
ちなみに、測量では、X軸は南北の縦方向で、
Y軸は東西の横方向です。
9.境界標があるときは、境界標の表示
現地に境界標が設置されている場合には、
下図17のように、通常、
境界標の種類が地積測量図に記載されています。
境界標の種類としては、金属標(金属プレート)、金属鋲、
プラスチック杭、コンクリート杭、石杭が一般的です。
境界標の種類については、
「境界標の種類を解説!5種類の境界標と実例」で、
くわしく解説しています。
ただし、現地に境界標が設置されていても、
地積測量図にはその境界標の記載が無い場合もあるので、
注意が必要です。
逆に、地積測量図に境界標が記載されていても、
工事などの影響で、現地の境界標が無くなっている場合もあります。
なお、境界標を勝手に撤去された場合については、
「境界標を勝手に撤去されたらどうすれば良い?」をご参照下さい。
10.測量の年月日
現在の不動産登記規則では、下図18のように、
測量の年月日を、地積測量図に記載することが定められています。
ただし、平成22年7月1日より前に作成された地積測量図では、
測量年月日の記載は義務ではなかったため、
測量の年月日は記載されていないので注意が必要です。
11.基準点や引照点の座標値
座標による地積測量図には、下図19のように、
測量の基準となる基準点又は準拠点、
若しくは引照点の座標値と標識が記載されています。
基準点や準拠点、引照点は、現地で測量を行う際に、
基準にした点のことです。
現地で測量を行う場合、通常、
準拠点などに金属鋲を設置してから、
基準点測量を行い、その後で各境界点の測量を行います。
そのため、現地の各基準点や準拠点には、
通常、金属標または金属鋲などが設置されているので、
その位置がわかるように、地積測量図にも、
その座標値と標識が記載されているのです。
ただし、三斜法による地積測量図には、
座標は関係ないため、基準点などの座標値の記載はありません。
なお、XY座標法による地積測量図の見方と注意点については、
「地積測量図の見方と注意点:XY座標の測量図編」で、
くわしく解説しています。
三斜法による地積測量図の見方と注意点については、
「土地境界線の立会や確認時に古い地積測量図を見る際の注意点」を参照下さい。
また、地積測量図と境界確定測量図との違いについては、
「確定測量図とは?地積測量図や境界確定図との違い」で、
くわしく解説しています。
地積測量図を取得する2つの方法
地積測量図を取得するには、次の2つの方法があります。
- 法務局で取得する方法
- 登記情報提供サービスを利用して取得する方法
1.法務局で取得する方法
法務局で地積測量図を取得するには、下図20の用紙に、
請求人の住所と氏名、地積測量図が必要な土地の市区町村名、
字名、地番、必要な通数を記入して、
□証明書欄と□地積測量図欄の□の所にチェックを入れます。
この地積測量図等の証明書交付請求書は、
「地積測量図等の証明書交付請求書」で、
用紙のダウンロードが可能です。
地積測量図は、1通につき450円の交付手数料がかかり、
通常、手数料分の収入印紙を、収入印紙欄に貼って納めます。
ただし、地積測量図が無い土地もあるため、
地積測量図の有無を確認してから、
手数料分の収入印紙を購入して、貼ると良いです。
また、郵送で取得する場合には、土地の地積測量図の有無を、
法務局に電話で確認してから、請求書と手数料分の収入印紙、
返送用封筒を同封して、法務局に発送すると良いです。
2.登記情報提供サービスを利用して取得する方法
登記情報提供サービスでは、
地積測量図などをネット上で取得できるサービスです。
地積測量図1通の取得手数料は362円で、
クレジットカード払いによる一時利用も可能です。
ただ、一時利用をする前の事前登録作業や、
常時、利用する場合にも、事前登録作業が必要になります。
なお、地積測量図の取得については、
どの土地の地積測量図であっても、
誰でも取得することが可能となっています。
ちなみに、法務局で地積測量図を取得するのは、
土地の境界線を調べたり、
土地の境界確定をする際などに取得するのが通例です。
土地の境界線を地積測量図で調べる方法については、
「土地の境界線を地積測量図で調べる方法」をご参照下さい。
土地の境界確定については、
「境界確定とは?境界確定の費用はいくら位?」で、
くわしく解説しています。
もし、土地の所有者や地番を知りたい場合には、
「土地の所有者を調べる3つの方法」や、
「地番の調べ方:土地の地番を調べる5つの方法」をご確認下さい。
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なお、地積測量図については、実務書も出版されていますので、
合わせてご確認いただければと思います。