「境界標が無くなってる」
「あったはずの境界標が見当たらない」
「土地の売買のため境界標の設置や復元が必要」
「境界標が動いてる・境界標のマークがわからなくなってる」

このような理由で、境界標を復元してもらいたいけど、
どうすれば良いのかわからないし、
費用はどの位なのかもわからない、
という人も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、境界標を復元するにはどうすれば良いか、
境界標の復元方法と費用の目安について、
土地の境界確定業務を行っている土地家屋調査士が、
くわしく解説いたします。

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この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。

経歴:開業以来21年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら

この記事をすべて閲覧することで、
境界標の復元と費用について知りたいことがわかります。

境界標を復元するにはどうすれば良い?

境界標を復元するにはどうすれば良いかは、
復元が必要になった原因により異なります。

境界標の復元が必要になる主な原因としては、
次の3つのケースがあります。

  1. 道路工事や建築工事が行われたことが原因の場合で、
    境界標が無くなったり、移動したり、破損した。
  2. 土砂などで埋まった、または、原因不明の場合で、
    境界標が無くなったり、移動したり、破損した。
  3. 土地の売却・賃貸・相続のために境界確定が必要な場合で、
    境界標の設置や復元が必要。

それぞれ、境界標を復元するにはどうすれば良いか、
境界標を復元できないこともあるのかどうかを、
順番に解説致します。

1.道路工事や建築工事が原因の場合

道路工事の写真
建築工事の写真

まず、道路工事や建築工事を行った業者と発注者を調べて、
工事によって無くなった境界標の復元をお願いすると良いです。

本来、境界標を勝手に動かしたり、壊したり、
無くしたりした人は、刑法第262条の2を根拠として、
罪になる可能性があるからです。

刑法第262条の2(境界損壊)
境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法第262条の2 – Wikibooks

2.土砂などで埋まった、または、原因不明の場合

土砂などで埋まったイメージ

自然な土砂などで埋まった場合や、原因が不明な場合は、
その土地の所有者が隣地所有者と協力して、
境界標の復元を行うことになります。

ただ、地積測量図などの調査や復元測量が必要なため、
その土地の地域の土地家屋調査士に依頼して、
境界標の復元をしてもらうのが一般的です。

災害などの場合を除いて、通常、
市や県が復元してくれるわけではありません。

3.土地の売却・賃貸・相続で境界確定が必要な場合

土地の売却のイメージ
土地の賃貸のイメージ

土地を売却したり、賃貸するのに敷地の工事が必要な際、
現地で境界が明らかでない場合には、
境界標を現地に設置して境界を明らかにするのが通例です。

相続する際にも、評価額の算定などのため、
相続前に相続不動産の範囲を知る必要がある場合には、
境界確定が必要になることもあります。

そういった場合、土地を売却・賃貸・相続する方が、
費用を出して境界確定を行うのが一般的で、
その際に境界標の復元も同時に行うことになります。

ただ、境界確定や復元の作業自体は、
地域の土地家屋調査士に依頼して、
境界標の復元などをしてもらうのが一般的です。

境界標を復元できないこともある!?
境界標を復元するためには・・・

境界標を復元するためには、
座標法によって作成された地積測量図(又は境界確定図)と、
復元したい境界点以外に、2点以上の基準になる点が必要になります。

この2点以上の基準になる点というのは、下図1のように、
地積測量図(又は境界確定図)に基準点や準拠点という名称で、
点名、XとY座標値、標種(金属鋲など)が載っている点のことです。

座標法によって作成された地積測量図の例
(図1:座標法によって作成された地積測量図の例)

そして、その基準点や準拠点(又は引照点)2点以上が、
現地にも残っている必要があります。

なぜなら、境界標を復元する際には、
基準点や準拠点(又は引照点)2点を基準にして、
その距離と角度から境界点を復元することになるからです。

そのため、地積測量図(又は境界確定図)に、
基準点や準拠点(又は引照点)が載っていたとしても、
現地にその点(金属鋲など)が残っていなければ、
図面をもとに境界標を復元することはできないということになります。

下図は、現地に設置された基準点と準拠点の例です。

(現地に設置された基準点の例)
現地に設置された準拠点の例
(現地に設置された準拠点の例)

ただし、下図のように、
白色(または赤色・黄色など)のかぶせ付きの金属鋲のみで、
基準点や準拠点などの名称がない場合もあるので注意が必要です。

現地に設置された準拠点の例
(現地に設置された準拠点の例)

基準点や準拠点は、道路上に設置されていることが多いので、
設置された後に道路工事や舗装工事が行われていると、
現地にはもう残っていないこともあります。

ただ、基準点や準拠点(又は引照点)が1点しかなかったり、
たとえ全部無くなっていたとしても、
他の境界標など基準にできる点が2点以上現地に残っていれば、
精度は多少落ちる可能性はありますが、境界点を復元することは可能です。

なお、昭和35年~昭和50年代に作成された地積測量図では、
座標法ではなく、三斜法で作成された図面がほとんどですので、
その図面をもとに境界標を復元することは原則できないと言えます。

下図2は、三斜法で作成された地積測量図の例です。
三斜法は土地を三角形に区切って面積を求めているのが特徴です。

三斜法によって作成された地積測量図の例
(図2:三斜法によって作成された地積測量図の例)

もし、地積測量図も境界確定図も無い場合には、
境界標を復元するための資料がないということになるので、
図面をもとにした境界標の復元はできないことになります。

境界標の復元ができる・できないの正確な判断は、
土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)が行えますので、
自分だけで判断せず、一度は相談してみると良いでしょう。

もし、図面をもとにした境界標の復元ができない場合には、
隣地所有者と現地立会いを行い、境界点を互いに確認してから、
境界標を新たに設置することになります。

まとめると次のようになります

地積測量図(又は境界確定図)の有無図面上と現地で基準になる点の有無図面による境界標の復元がてきる・できない
座標法の地積測量図あり2点以上あり復元できる
座標法の地積測量図ありなし復元できない
三斜法の地積測量図ありあり又はなし原則復元できない
地積測量図も境界確定図もない復元できない

境界標を復元するには、復元測量ができる器械が必要となり、
個人の方がご本人で復元作業をするのは無理があるので、
お近くの土地家屋調査士にご相談または依頼するのが一番です。

ただ、一般的に、工事屋さんや測量士さんでも、
復元測量をして境界標を再設置することはできます。

しかし、境界標の再設置と言っても、
境界標は勝手に設置できる?」のように、
勝手に設置することはあまりよくないこともあります。

そこで、土地家屋調査士であれば、
境界についての知識と経験が豊富で技術も高いので、
より正確で安心できる境界標の復元が可能なのです。

境界標の復元方法

境界標を復元する実際の作業の流れとしては、
一般的に次の1~5の手順で行われます。

1.法務局で資料を取得して内容を調査する。

境界標の復元が必要な土地の地積測量図を法務局で取得して、
座標法によって作成された図面なのかどうかと、
基準点(準拠点や引照点含む)の記載の有無を調べます。

もし、地積測量図がない場合や、
取得した地積測量図が三斜法で作成されている場合には、
図面をもとに境界点(境界標)を復元することはできません。

2.現地を調査する。

地積測量図(又は境界確定図)に載っている基準点や、
準拠点、境界標を少なくとも2点以上、現地で探します。

たとえば、地積測量図に基準点として金属鋲が載っていれば、
現地でその金属鋲の有り無しを調べるわけです。

準拠点や引照点、境界標についても同様に、
現地で有り無しを調べます。

3.事前測量をする。

現地に残っていた基準点、準拠点、引照点、境界標を、
すべて測量します。

測量後、地積測量図などに載っている座標値をもとにして、
現地で測った各点の位置関係を距離と角度で検証します。

具体的には、図面上の2点と、現地で測った2点の距離が、
mm単位で合っているかどうかなどを確認するのです。

4.復元測量をする。

事前測量の結果、地積測量図(又は境界確定図)の2点と、
現地の2点が一致していれば、
復元したい境界点を現地に復元測量で落とします。

復元測量は「逆打ち」とも呼ばれていて、
逆打ちの際は、いきなり境界標を設置するのではなく、
現地にマーキング 又は 仮杭で印を入れます。

そして、現地に印を入れた点について、
土地所有者と隣地所有者など関係者全員が現地で立ち合い、
境界点に間違いがないかをお互い確認するのです。

5.復元点の立会確認をして境界標を設置する。

関係者全員で境界点の確認をする際に、
現地のマーキング又は仮杭で印を入れた所に、
どんな境界標をどのように設置するのかも同時に確認します。

境界標としては、金属標、金属鋲、コンクリート杭、
プラスチック杭、石杭などを設置するのが一般的です。

そして、それぞれの境界標の頭の部分には、
次のいずれかのマークがありますので、
どのように設置するのかまで確認しておいた方が良いでしょう。

十字マーク矢印マークT字マーク一本線

以上が、境界標を復元する実際の作業の流れとなります。

境界標の復元にかかる費用の目安

境界標の復元にかかる費用は、
通常、10万円からになります。

復元点の数や、復元作業の難易度などによって、
費用が高くなったり安くなったりするのです。

たとえば、復元点の数が1点で、地積測量図もあり、
現地に基準点が2点以上残っていれば、
10万円を切ることもあります。

逆に、復元点が数点~十数点で、
現地の基準点が無い又は1点しかないような場合は、
復元するための作業が大変になるので、
その分費用が高くなり、20万円やそれ以上になることもあるのです。

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