この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。

経歴:開業以来21年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら

土地境界線の立会いや確認のため、
地積測量図を入手したけど、土地が三角形に区切られていたり、
古くてあまり見慣れない図面のため、見方がよく分からない、
という人も多いのではないでしょうか?

そこで、この記事では、
古い三斜法の地積測量図の注意点と見方について、
土地の境界確定業務を行っている土地家屋調査士が、
わかりやすく解説致します。

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この記事をすべて閲覧することで、
古い三斜法による地積測量図の注意点と見方が分かります。

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土地境界線の立会や確認時に古い地積測量図を見る際の注意点

まず、古い地積測量図というのは、
次のような三斜法による地積測量図のことです。

土地を三角形に区切り、各三角形の面積を計算して、
面積を合計することで、土地の面積を求積しているのが特徴です。

このような三斜法による地積測量図は、
昭和35年から平成17年3月の法改正まで、
法務局へ提出されていた図面となります。

ただ、三斜法で作成された地積測量図は、
作製年月日が次の2つの時期によって、
それぞれ注意すべきことが違ってきます。

  1. 昭和35年~昭和52年9月に作製された地積測量図
  2. 昭和52年10月~平成17年3月に作製された地積測量図

それでは、作製された時期ごとの注意点について、
順番に解説いたします。

1.昭和35年~昭和52年9月に作製された三斜法の地積測量図

昭和35年~昭和52年に作製された地積測量図の内、
まず、昭和35年~昭和41年3月までの地積測量図は、
メートル単位で作製された測量図だけでなく、
尺貫法で作成された測量図もあることに注意が必要です。

昭和35年から昭和41年3月まで作製された地積測量図の例
(図1:昭和35年から昭和41年3月まで作製された地積測量図の例)

尺貫法の場合、面積については坪単位で表し、
長さについては1間単位で表わします。

1坪のイメージとしては、下図2のように、
畳2枚分の広さが1坪で、
メートルに換算すると約3.31㎡のことです。

(図2:尺貫法の1坪と1間のイメージ)

1間のイメージとしては、畳の長い方の1辺の長さが1間で、
メートルに換算すると約1.818mになります。

昭和35年~昭和41年3月に作製された地積測量図では、
1間単位(いっけん)を略してKという文字で記載して、
尺貫法による地積測量図とわかるようにしている図面もあります。

しかし、単位について何も記載してない地積測量図もあるため、
尺貫法の1間単位なのに、メートル単位で読んでしまうと、
長さや面積を読み間違えてしまうこともあるのです。

そのため、地積測量図の作製年月日が、
昭和35年~昭和41年3月の間の場合、
メートル単位で書かれた図面なのか、
尺貫法の1間単位で書かれた図面なのかに注意が必要なのです。

ちなみに、昭和41年4月以降は、
尺貫法を用いることを計量法という法律で禁止して、
違反者には罰金とし、メートル法に移行したという経緯があります。

次に、昭和35年~昭和52年9月に作製された地積測量図は、
境界点間の距離や、境界標の記載は義務ではなかったため、
境界点間の辺長も、境界標の記載も無いのが普通です。

昭和35年~昭和52年9月まで作製された地積測量図の例
(図3:昭和35年~昭和52年9月まで作製された地積測量図の例)

ただ、地積測量図の作製者によっては、
境界点間の辺長を記載している場合もあります。

また、隣接地との境界立会を求められていなかった時期のため、
境界立会いをしないで、作成されている地積測量図もあります。

中には、境界立会いどころか、現地の測量を行わないで、
公図を写して、分筆線を引き、
図上で読み取って求積した地積測量図もあるくらいです。

三斜法で求積する底辺と高さについても、
実測した距離ではなく、図面上、
三角スケールで読み取った長さの場合もあります。

三角スケール
(三角スケール)

そういった時代背景を考慮した場合、
昭和35年~昭和52年9月に作製された地積測量図は、
あまり参考にならないと考えるのが適切で、
各境界点の正確な復元能力も無いと言えるのです。

2.昭和52年10月~平成17年3月に作製された三斜法の地積測量図

昭和52年10月以降に作製された三斜法の地積測量図は、
通常、現地で境界立会いや、境界測量が行われた上で、
作製された地積測量図になります。

昭和52年10月以降に作製された地積測量図の例
(図4:昭和52年10月以降に作製された地積測量図の例)

もし、現地に境界標がある場合には、
地積測量図にも、その境界標の種類などが記載されています。

つまり、当時の地積測量図に境界標の記載があれば、
少なくとも、地積測量図が作成された時には、
現地に境界標があったということです。

ただ、各境界点間の辺長などは、
巻き尺で測量をしていた時期もあるため、
測量の精度的には、高いとは言えません。

巻き尺で測量
(巻き尺で測量)

そういった背景を考慮した場合、
昭和52年10月以降に作製された三斜法の地積測量図は、
境界標や辺長など、ある程度は参考になると考えるのが適切で、
昭和52年9月以前の地積測量図とは、区別することが必要です。

なお、平成17年3月以降に作成された地積測量図では、
各境界点の座標値の記載が義務化されましたので、
三斜法から座標法の地積測量図へと変わっています。

座標法の地積測量図の見方と注意点については、
地積測量図の見方と注意点:XY座標の測量図編」で、
くわしく解説しています。

三斜法による地積測量図の見方

それでは、三斜法による地積測量図について、
どこに何が記載されているのかを、
1つ1つ見ていきましょう。

① 土地の所在と地番の見方(隣接地番を含む)

まず、下図5のように、地積測量図の左上には、
土地の所在欄と地番欄があり、
どこの土地の地積測量図なのかがわかるようになっています。

土地の所在と地番
(図5:土地の所在と地番)

上図5の地積測量図で言えば、
〇市〇町23番2と、23番5と、
23番6の各土地の地積測量図ということになります。

地積測量図の地番欄には、上図5のように、
23-2、-5、ー6といった一部省略した書き方や、
23-2、23-5、23-6といった書き方もありますが、
どちらも23番2,23番5、23番6の土地という意味です。

なお、昭和35年頃から昭和50年代中頃までは、
上図5のような地積測量図の様式でしたが、
昭和50年代の中頃からは、下図6のように、
土地の所在と地番欄が、右上にある現在と同じ様式になっています。

昭和50年代中頃からの地積測量図の様式
(図6:昭和50年代中頃からの地積測量図の様式)

また、下図7のように、三斜法の地積測量図には、
土地の形状と、各土地の地番などが記載されており、
隣接地の地番や、土地の位置関係もわかるようになっています。

土地の形状と隣接地を含む土地の地番
(図7:土地の形状と隣接地を含む土地の地番)

ただ、分筆登記でできた地積測量図の場合には、
下図8ように、土地の地番にABCや、①②③、
イロハなどの符号も付けられています。

分筆登記でできた地積測量図の例
(図8:分筆登記でできた地積測量図の例)

逆に、分筆登記以外でできた地積測量図の場合、
地番にABCや、①②③、
イロハなどの符号は付けられていません。

また、下図9のように、土地の地番以外に、
「農道」または「水路」、「道路」、
「道」と記載されている場合もあります。

農道や水路、道路などの記載
(図9:農道や水路、道路などの記載)

まず、「農道」または「道」、「水路」といった記載があれば、
通常、地番の無い里道や水路のことで、
市町村などが管理している法定外公共物があるということです。

もし、「道路」といった記載がある場合には、
通常、市道または町道、県道または国道など、
市や県、国が管理している道路があるということです。

ただ、「道路」の場合は、土地に地番があるので、
地積測量図の作成者によっては、「道路」という記載ではなく、
道路の土地の地番を記載することもあります。

② 方位の見方

三斜法による地積測量図には、下図10のように、
図面上、どの方向が北なのかがわかるように、
方位記号が記載されています。

方位
(図10:方位)

方位記号については、数字の4のような先端が北方向で、
もし、方位記号の先端にNという記号があれば、
Nの記載のある方向が北方向という意味です。

方位記号については、次のような感じで、
地積測量図の作成者によってデザインが異なりますが、
数字の4の形の先端や、Nが、北を意味しています。

③ 縮尺の見方

三斜法による地積測量図には、下図11のように、
図面の縮尺が何分の何かがわかるように、
縮尺が記載されています。

縮尺
(図11:縮尺)

土地が市街地か、農耕や山林地域なのかで違いはありますが、
大体200分の1~500分の1の縮尺で作成されています。

④ 土地の各境界線や辺長(距離)の見方

まず、土地の各境界線については、下図12のように、
土地の形状の所に実線で記載されています。

土地の境界線は実線
(図12:土地の境界線は実線)

ただ、三斜法による地積測量図の場合、
土地を三角形に区切っているので、
どの線が境界線なのかが、わかりにくいこともあります。

そこで、土地の境界線の見方としては、
実線で書かれているのが境界線で、
一点鎖線又は点線で書かれているのは、
三斜による区切り線となります。

ちなみに、土地の境界線がわかるように、
赤色で囲んでみたのが、下図13です。

赤の実線が土地の境界線
(図13:赤の実線が土地の境界線)

次に、境界線の辺長(距離)については、
上図13のように、辺長の記載がある地積測量図と、
辺長の記載が無い地積測量図があります。

境界線の辺長の記載が無い地積測量図では、
下図14のように、土地を三角形に区切り、
三角形の底辺と垂線の距離のみ記載された図面になります。

境界点間の辺長の記載が無い地積測量図の例
(図14:境界線の辺長の記載が無い地積測量図の例)

このような地積測量図の場合、
縮尺スケールで各辺長を読み取るなどして、
土地の境界線の辺長を調べることになるのです。

しかし、辺長の記載がない地積測量図については、
現地で境界立会や、境界測量すらしていない可能性があるため、
参考になる図面とは言えません。

なお、境界立会いについては、
境界立会とは?土地の境界立会には行くべき?」や、
土地境界線の立会い時の7つの注意点」を参照下さい。

⑤ 土地の求積表(面積計算)の見方

土地の面積の求積表については、下図15のように、
土地を三角形で区切った各面積を、合計した計算式になります。

求積表
(図15:求積表)

この例では、23番2の土地から、
Bの23番5と、Cの23番6を分筆した地積測量図で、
BとCの各土地は、各三角形の面積を合計する方法で、
各土地の面積を出しているのです。

しかし、Aの23番2の土地については、
分筆前の登記面積310.100㎡から、
分筆したBとCの土地の面積を差し引く計算になっています。

このような求積方法を残地求積というのですが、
残地求積で計算された土地Aについては、
土地の形状や面積が、現地と一致してない場合があるので、
注意が必要になるのです。

⑥ 地積測量図の作製者と作製年月日の見方

地積測量図の作製者と作製年月日は、
下図16のように、地積測量図の右上端に記載されています。

地積測量図の作製者と作成年月日
(図16:地積測量図の作製者と作成年月日)

地積測量図の作製者については、通常、
土地家屋調査士の住所、氏名、職印が記載されていますので、
もし、地積測量図の内容でわからないことがあれば、
地積測量図に記載されている作製者に聞く方法もあります。

ただし、三斜法の地積測量図は、かなり古い測量図になるため、
作製者がすでに亡くなっていたり、
土地家屋調査士をやめていることもよくあることです。

なお、昭和50年代中頃からは、
下図17のように、現在と同じ様式となっているため、
地積測量図の作成者と作成年月日欄は、用紙の左下にあります。

現在の様式の地積測量図の作製者と作成年月日
(図17:現在の様式の地積測量図の作製者と作成年月日)

⑦ 地積測量図に記載された申請人とは?

地積測量図の右下には、下図18のように、
申請人欄があり、ここに記載されている人が、
当時の土地の登記名義人ということになります。

地積測量図の申請人
(図18:地積測量図の申請人)

なぜなら、地積測量図は、分筆登記申請や、
地積更正登記申請で、法務局に提出する図面となり、
登記申請をする際の土地の登記名義人が、申請人になるからです。

ここまで、古い三斜法による地積測量図を見る際の注意点と、
見方について解説してきましたが、
三斜法による地積測量図以外にも、作られた時期によっては、
XYの座標法による地積測量図があります。

座標法による地積測量図の見方と注意点については、
地積測量図の見方と注意点:XY座標の測量図編」で、
くわしく解説しています。

なお、地積測量図を見る事になるのは、
土地を売却したり、土地を貸したり、
敷地の周囲に構造物を設置する場合に、
境界の立会いや、境界の確認をする時が多いです。

そのため、境界の立会いについては、
境界立会とは?土地の境界立会には行くべき?」や、
土地境界線の立会いの手順と注意点」、
土地境界線の立会い時の7つの注意点」を参照下さい。

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