この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:土地の境界確定や不動産の表示登記全般。

経歴:開業以来23年間、土地の境界確定など登記関係業務を行っています。
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「土地の売却を依頼した所、境界確定測量が必要と言われた」
「境界確定測量とは?どんな時に必要で、最初にやるべき?」
「地積測量図があっても、境界確定測量は必要?」
「塀等で境界がはっきりしていても、境界確定測量は必要?」
「売却価格が安くても、境界確定測量は必要?」
「境界確定できなかったり、してなかったらどうなる?」

この様に、土地の売却に境界確定測量が必要かわからないし、
本当に境界確定測量が必要なのかも知りたい、
という人も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、土地の売却に境界確定測量は必要かについて、
疑問や悩みをすべて解決できるように、
土地の境界確定業務を行っている土地家屋調査士が解説致します。

この記事をすべて閲覧することで、土地を売却する際に、
どんな場合に、どの様な理由で、境界確定測量が必要なのか全てわかります。

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土地の売却に境界確定測量が必要な3つの理由

土地の売却に、境界確定測量は、必ずしも必要ではありません。

しかし、境界が未確定の土地の場合、次の3つの理由から、
土地を売却する際には、境界確定測量を行うのが一般的です。

  1. 適正な価格で土地の売却をスムーズに進めるため
  2. 将来的な境界トラブルを防止するため
  3. 土地の売主には、境界明示義務があるため

それでは、それぞれ具体的な理由を、順番にご説明いたします。

1.適正な価格で土地の売却をスムーズに進めるため

境界が確定していない土地でも、売却することはできますが、
境界が確定している場合に比べて、土地の面積も不明確なため、
土地の評価額が低くなる可能性があります。

境界が確定していない土地は、評価額が低くなる可能性
(境界が確定していない土地は、評価額が低くなる可能性)

土地の評価額が低くなっても、売れればまだ良いのですが、
境界が未確定の土地は、なかなか売れないなど、
土地の売却をスムーズに進めることができなくなる可能性が高くなります。

なぜなら、住宅ローンを利用して不動産を購入する人が多い中、
境界が未確定の土地の場合、通常、
住宅ローンの担保設定ができないため、
住宅ローンを借りることが前提の買主は、購入できないからです。

境界が未確定の土地の場合、通常、住宅ローンを借りる前提の人は買えない
(境界が未確定の土地の場合、通常、住宅ローンを借りる前提の人は買えない)

そのため、境界が未確定の土地の場合は、境界確定測量を行い、
土地の正確な境界と面積を出すことによって、
適正な価格で、土地をスムーズに売却できるようになるのです。

買主の視点からも、境界が確定している土地であれば、
住宅ローンを借りる前提の人も購入できるようになり、
買った後も安心なので、購入しやすく、買いたい人も多くなり、
買い手が多い程、土地の売却もスムーズに進めやすくなるわけです。

境界が確定している土地は、土地の売却をスムーズに進めやすい
(境界が確定している土地は、土地の売却をスムーズに進めやすい)

2.将来的な境界トラブルを防止するため

境界が確定していない土地をそのまま売却すると、売却後に、
隣地との境界トラブルに巻き込まれる可能性があります。

たとえば、土地を売却した後で、
隣地の一部を不法に占拠しているなどと言われたり、
境界に関する訴訟に巻き込まれる可能性があります。

境界未確定の土地は、土地売却後、境界に関する訴訟に巻き込まれる可能性
(境界未確定の土地は、土地売却後、境界に関する訴訟に巻き込まれる可能性)

そのような境界トラブルに巻き込まれないためにも、
土地の売却前に、境界確定測量を行うことで、
将来的な境界トラブルを、未然に防ぐことができるのです。

3.土地の売主には、境界明示義務があるため

土地を売却する際の売主は、通常、買主に対して、
土地の境界を現地で明示する義務を負っています。

ただ、土地の売主の境界明示義務は、法律上あるわけではなく、
通常、土地の売買契約書の条項で定められているものです。

土地の売主の境界明示義務は、通常、売買契約書で定められているもの
(土地の売主の境界明示義務は、通常、売買契約書で定められているもの)

もし、売主が、その境界明示義務を怠った場合には、
民法上の債務不履行の責任を問われる可能性もあります。

そのため、境界が不明な土地を売却する際には、
境界確定測量を行った上で、買主に現地で境界を明示するのが、
安全で安心な取引につながるのです。

境界確定測量とは?どんな時に必要で、最初にやるべき?

境界確定測量とは、次の1~5の流れで行われる作業のことです。

  1. 土地の周囲の隣地所有者と、境界の確認を行う。
  2. 現地の各境界点に、境界標を設置して、測量する。
  3. 境界確認書 又は 隣接境界線証明書を作成する。
  4. 境界確認書などに、隣地所有者の署名・押印を頂く。
  5. 確定測量図を作成し、境界確認書などと一緒に売主に渡す。

ちなみに、境界確定測量は、単に境界確定や、
確定測量と言うこともあります。

境界確定測量は、土地の面積や隣地の数と状況にもよりますが、
一般的に、数十万円以上の費用がかかり、
2ヶ月程度~数ヶ月以上の期間がかかる作業になります。

境界確定測量は、どんな時に必要?

境界確定測量は、次のような場合に必要になります。

  • 土地を売却する際に、境界が不明確な場合
  • 地積測量図など公的な測量図が備わっていない場合
  • 現地に境界標が設置されていない場合
  • 隣地との境界が不明確な場合
  • 土地の分筆をしたい場合

なお、上記の場合に、常に境界確定測量が必要なわけではなく、
必要に応じて、境界確定測量が行われるということです。

境界確定測量は、一番最初にやるべき?

土地の売却を予定している場合には、
一番最初に、境界確定測量を行うのが良いですが、
買主が見つかってからや、売買契約をした後で、
境界確定測量を行う流れでもかまいません。

買主が見つかってからや売買契約してから、境界確定測量でも良い
(買主が見つかってからや売買契約してから、境界確定測量でも良い)

しかし、隣地所有者と境界の確定ができなかった場合、
契約解除になるなど、トラブルの元になるため、
先行して、境界確定測量を行う方が良いです。

境界確定測量を一番最初に行うことで、
土地の面積や、境界が確定している状態であれば、
買主は、安心してその土地の購入を決断できるため、
売却しやすくなる利点もあるからです。

地積測量図があっても、境界確定測量は必要?

もし、下図のようなXY座標による地積測量図があり、
現地の各境界点に境界標が設置されていて、
図面と現地で境界が明らかな場合は、境界確定測量は不要です。

XY座標による地積測量図と現地の境界標のイメージ
(XY座標による地積測量図と現地の境界標のイメージ)

しかし、地積測量図があっても、XY座標ではなく、
下図のような三斜法による地積測量図の場合は、
通常、境界確定測量が必要と言えます。

三斜法による地積測量図の場合、通常、境界確定測量が必要
(三斜法による地積測量図の場合、通常、境界確定測量が必要)

なぜなら、座標でない上図の様な三斜法による地積測量図は、
主に昭和時代に作成された現地復元能力が無い図面で、
通常、各境界点が、現地のどこなのかを示すことが難しく、
境界が確定しているとは言えないからです。

なお、XY座標による地積測量図がある場合でも、
現地の境界点に境界標が無く、現地で境界が不明な場合は、
地積測量図を基に復元測量を行い、現地に境界標を復元して、
隣地所有者と境界を確認する方法があります。

ただ、基準点や境界標が現地に残っていないなどの理由で、
各境界点の復元測量ができない地積測量図の場合には、
改めて境界確定測量が必要になることもあるので注意が必要です。

XY座標による地積測量図があっても、境界確定測量が必要な場合もある
(XY座標による地積測量図があっても、境界確定測量が必要な場合もある)

境界標の復元測量や、復元方法と費用については、
境界標を復元するには?復元方法と費用の目安」で、
くわしく解説しています。

塀等で境界がはっきりしていても、境界確定測量は必要?

土地の周囲が、ブロック塀やフェンスなどで囲まれていたり、
隣地とは段差がある様な場合、境界ははっきりしていると思い、
境界確定測量は本当に必要なのかと、疑問に思われる方もいます。

ブロック塀やフェンスなどで囲まれていても、境界確定測量は必要?
(ブロック塀やフェンスなどで囲まれていても、境界確定測量は必要?)

しかし、土地の周囲にあるブロック塀などの構造物だけでは、
その構造物のどこが境界なのかが正確にわからないだけでなく、
隣地所有者の境界の認識とは、異なることもあります。

隣地所有者の境界の認識と異なることもあるため
(隣地所有者の境界の認識と異なることもあるため)

このことは、隣地と段差がある場合も同じです。

さらに、境界付近に杭などが設置されていたとしても、
それが境界標の杭なのかどうかは、測量図面などを調べたり、
隣地所有者にも確認してみないことには、正確な所はわからないのです。

杭があっても、境界標かどうかは、確認が必要
(杭があっても、境界標かどうかは、確認が必要)

そのため、ブロック塀やフェンスなどの構造物があるからとか、
隣地とは段差があるなどの理由だけでは、
境界がはっきりしているとは言えないため、
境界確定測量が必要な場合もあるのです。

売却価格が安くても、境界確定測量は必要?

土地の売却価格が安いため、高い費用がかかる境界確定測量は、
できればやりたくないと思われるお気持ちはわかります。

しかし、土地の売却価格が安くても、
境界が不明のままで、境界確定測量もしないままだと、
さらに安くなる可能性もあります。

境界が未確定では、土地の評価額が安くなる可能性
(境界が未確定では、土地の評価額が安くなる可能性)

また、境界が不明なまま土地を売却した場合、将来的に、
境界紛争や訴訟などに巻き込まれる可能性もあるため、
売却価格が安くても、境界確定測量をしておいた方が安心です。

売買契約書に、境界明示義務の免責などを記載して、
境界明示義務を回避することも考えられますが、
完全に回避できない可能性もあるため、やはり、
売却価格が安くても、境界確定測量はしておくことをお勧めします。

境界確定できなかったり、してなかったらどうなる?

境界確定ができなかったり、境界が未確定のままの場合は、
買主に敬遠されやすくなり、通常、土地の評価額も下がる可能性があります。

少なくとも、住宅ローンを借りて土地を購入する人にとっては、
境界が未確定の土地は、住宅ローンの担保設定が難しくなり、
購入をあきらめる理由になります。

境界が未確定の土地は、住宅ローンを利用する買主からも敬遠されやすい
(境界が未確定の土地は、住宅ローンを利用する買主からも敬遠されやすい)

また、境界未確定の土地を購入しても、境界が不明なため、
建築確認申請がスムーズに進まなかったり、
建築計画や外構工事による越境リスクも抱えることになるため、
購入をあきらめる理由になりえるのです。

たとえ、土地の売買契約を結んでいたとしても、
その後、取引きまでに境界を確定できなかった場合には、
契約を解除される可能性もあります。

そのため、将来的にも、土地の売却を考えている場合には、
まず、土地の境界が確定しているのかどうかを調べて、
境界が未確定の場合や、境界が不明な場所があれば、
一番最初に、境界確定測量をすることをお勧めいたします。

境界が未確定の場合は、境界確定測量をする
(境界が未確定の場合は、境界確定測量をする)

以上、土地の売却に境界確定測量は必要なのかについて解説いたしました。

なお、境界確定とは何かと、境界確定の費用については、
境界確定とは?境界確定の費用はいくら位?」で、
くわしく解説しています。

確定測量とは何かと、境界確定測量は必要かについては、
確定測量とは?境界確定測量は必要?」もご参照下さい。